オレンジの世界。

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「A、大丈夫か？」


頭上から聞こえるいつもより



優しい声



いつもなら嬉しくて仕方ないことなのに、



「大丈夫だから、戻っていいよ…」




突き放す。



だって、渉には迷惑かけたくない。


心配させてお仕事に支障だしてほしくない。




発覚してもまだ黙っていたけれど




久々にご飯食べることになって



隠しきれるか不安だったけどもう、




言うしかない、よね……




「絶対大丈夫じゃないだろ？病院行くぞ」




「病院は………もう行ったから」




「……は？前からそんなんだったのか？」



怒るの当たり前だよね、ごめんね……




「なにか、病気だったのか……？」



眉を下げて



顔を覗き込んでくる彼



その瞳は震えてて




恐怖を感じてるように見えた





「病気じゃないから……安心して？」

彼のそこから目を離さずにそう




答えたら




震えは収まり、



同時にしっかりと私を捉える




「じゃあ、何……？」



もう彼の中で予想はついているのだろうか



予想を確実に変えようと問いかける









「……………妊娠、したの」




「…………えっ」





目を彼の瞳から一旦逸らし、




また瞳を見る




そこには




うっすらと縁にたまった涙






テレビでも



今まで一緒にいても



見たことがなかったその涙





滅多に見せないそれを見て




この人で良かった、



と思った






「ほんと、に…？」


「…うん」


「………俺とAの？」




「そうだよ…」



まだ私だって実感はないけど



お腹に手を当てる









「…………ありがとう」


声とともに重なる手と手

恥ずかしがり屋な彼女→←こんな俺だけど

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