オレンジの世界。

ノート貸して5 ページ26

あたふたして噛みつつも

丁寧にわかり易く解説してくれる

(人2)さん

必死な姿が少し可笑しい

『ごめんね、説明下手で』

って申し訳なさそうに言うから

一生懸命俺のために

頑張ってくれた(人2)さんに

思わず頬が緩んで

「そんなことないよ、ありがとう」

自分でもビックリするくらい

優しい声で言ってしまった

『よっ、横尾くん！…………』

ん？

「ごめん聞こえなかった」

いつもの癖で相手の口元に耳を近づける

『えっ、あ…』

……………
どうしよう…

横尾くんがこんなに近いの初めて…

どうしてこもっちゃうんだろう

どうしてこんなに声が届きにくいの

心臓がバクバクとうるさくて

横尾くんの声より大きく聞こえて

恥ずかしさが倍増する

絶対聞こえちゃってるよ…

『(人2)さん？』

「いっ、いつもあひあ…っ」

ありがとうも噛むなんてどうかしてる

『ふふ、大丈夫(笑)』

うぅ、笑われちゃった…

でも、いいんだ。

横尾くんの印象に残れる人になれば

何年後かに私のような人を見て

あぁ、なんかいたなぁって思ってくれたら

深呼吸をして

「横尾くん、いつもありがとう」

好きの次に伝えたい言葉

いちばん言いたいこと伝える勇気は

ないからせめて

『俺、(人2)さんにありがとう

って言われるようなことしてる？』

困ったように眉毛下げて笑う

「へっ？！あっ、

そうだよね？！

わたし何言ってるんだろうね？！」

ほんとに何言ってるんだろう…

横尾くんからすれば日常なのかもしれない

わたしに会えば挨拶してくれて

勝手に藤ヶ谷くんと笑ってるの見て

癒されて

横尾くんの姿見て元気もらって

頑張ろうって思えて

でも横尾くんが学校に来て

一緒のクラスでいてくれて

ありがとうって思える

でも…

「横尾くん、やっぱりして

もらってると思う。」

ん？って

慌てたと思ったら急に黙り込んで

考えてたわたしを待ってたかのように

顔向けて聞いてくれる

「わたしに会えば

挨拶してくれるもん

それで今日も頑張ろうって思えるの」

『……俺にそんなパワーないよ？』

少し間を置いて横尾くんが聞く

「あるよ？

横尾くんだもん」

『…それってどういう意味？』

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