プロポーズ。W.Y編3 ページ5
渉「俺…Aも知ってると思うんだけど、すごい不器用で思ってることとは逆のこと言っちゃったりしてさ。そんな自分が嫌いだし、それで他の人もたくさん傷つけたりしてきたと思う。でも…Aはそんな俺のこと、好きでいてくれた」
A「うん…」
なんだか恥ずかしそうに下を向く彼女。ちょっと不安になっちゃうよ…断れるんじゃないかって。
渉「A、顔あげて聞いて欲しいんだけど…」
あ……。顔あげた彼女の顔は、歪んで涙堪えてる顔だ。
いままで何度か泣かせてしまったから…前、泣かせたときはそのことを思い出して、胸がすごく苦しくなった。でも……
今回は。
プロポーズされるんだ、って分かって自然に溢れてきた涙を聞くまで流さない、という彼女の少し強気な決意が見えて。
渉「A…たぶん今言ったらしばらく言わないと思うからよく聞いて。」
渉「Aのこと、好きだよ…だから、これからもきっとたくさん迷惑かけるけど」
渉「けっ、結婚してくだしゃい……」
A「わた、可愛い〜」
癖で思わずお辞儀しながら、したプロポーズ。まさか噛むなんて思ってもなかった……
噛んだ途端にあぁ……やっぱり自分は…
って思ったのに。
顔を上げたら、目細めてクスクス笑う彼女がいて。
俺が噛むといっつもこうやって笑う。
口角あがるの必死で抑えながら。
渉「せっかくプロポーズしたのに、第一声それかよ」
Aが相手だと、すぐに冷たくなっちゃう俺の口。それは照れ隠しでもあったりする。
A「ふふ、ごめんね〜だって噛むなんて…わたらしいな〜って思って」
俺らしい……か。
渉「でも、ごめん…カッコ良くするつもりだったのに。」
A「私にとっては最高のプロポーズだから
」
そう言いながら、目元に貯まった涙を拭う。
俺はふと思った。
プロポーズという大事なときに噛んで笑ってくれる人は、Aだけだろうな…
………………。
渉「あっ!忘れてた…へ、返事は?」
俺が噛んじゃったせいですっかり忘れてた。まだオッケーもらえてない!
A「言う必要あるの?」
まだクスクス笑ってる彼女。
あれ……?いつもなら、嬉しそうに笑って飛びついてくるくせに…何だか今日は…
渉「言ってよ…」
A「これからもよろしくね、わた」
俺の名前を呼んだ瞬間に一瞬にして顔が歪んで子供みたいに泣き始める。
Aに近寄って抱きしめて。そっと瞼にキスを落とした。
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作者名:いくみるく | 作成日時:2014年12月9日 16時