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エピローグ ページ38

・・・









「オンボロ寮でのプロム、楽しかったです」

「楽しんでくれてよかったよ。トリックスター」

「でも、Aちゃんと過ごす時間、短くなっちゃったよね・・・」


監督生は・・・異世界から来た女の子は首を横に振る。


「Aと先輩達を引き剥がしちゃいけないって確信できましたから」

「なぁ、本当に帰っちまうのか? ここでずっと過ごせばいいのに」

「僕も友人がいなくなって寂しい。それはAも同じだと思う」

「これこれお主達。監督生が困っておるじゃろ」


1度校舎を振り返った。
しかし同級生達に別れを告げずに自分の故郷へ帰ろうという決心は揺るがない。
それに、もう一度ここに帰ってくるつもりでもある。


「僕は、じゃぁ・・・これで。またここに帰ってきますね」

『じゃ行こっか。監督生』


空気に溶け込んでいたのだろうか。
当たり前のようにAが、鏡の前に立って監督生に手を差し伸べている。


「A!? これは一体?」

「・・・A。黙ってこっち来い」


彼女はニッコリ笑って先輩たちを顧みもしなかった。
どうやら監督生と共に行くらしい。
監督生は帰る所へ帰るのだ。
だがAは違う。
Aの居場所は、此処だ。


『5分』


5本指を先輩達に掲げて静止させる。


『5分で帰る』


そしてその手を振って、また後でと笑顔を見せながら監督生と一緒に溶け込んでしまった。
鏡の向こう、異世界へ。


「帰ってきたら説教ね」

「拙者も同感。許せない・・・拙者をおいてくなんて・・・」



彼女達を待つ5分が永遠に感じられた。
アズールは1分のうちに何度も眼鏡を上げ、ジャミルは腕時計をしていないのに何度も手首を確認していた。


「おい。わかってんだろうな」

「あぁ。5分で帰ってこなかったら僕達も行く」


シルバーはAの傍に今すぐ行きたいという想いが先走り、ふらっと鏡に近づいてしまう。
しかしそれをリーチ兄弟が止めた。









やっと5分が過ぎた。
一向に変化が訪れないため、2人の王子が魔力を込め始める。
その時だ。
1つのボストンバッグが鏡から吐き出されたのは。
それからなだれ込むように大量のキャリーケースが現れる。
そして最後に1本の腕が突き出た。
可愛いネイルをしているが、紛れもなくこの手は・・・。
トレイがその手を握って引っ張った。


『ただいま!!!』

「ふぅ・・・荷物が多くて少し遅れました。ごめんなさい」


彼らの日常が帰ってきた。

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作者名:スカフィロ | 作成日時:2021年1月7日 17時

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