貴方と窓から見る景色裏【ONE PIECE】 (ページ13)

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そんな穏やかな空気を一瞬で切り裂く大きな音でまた赤ん坊が泣き始める。
よくも子供たちを泣かせたなという怒りでローは窓を睨みつけた。
しかし、そこに顔や目などは無い。
冷たい爬虫類の蛇肌が窓いっぱいに広がっていた。
既に侵入していた筋肉質の大きな白い尻尾が器用にローの腰に巻き付いたと思うと雑に外へと引っ張りあげる。
おかげで頭が窓枠にぶつかりそうになった。
ローは眩しさに目を細めたが、久しぶりに見るその表情が変わり果てていることに気付く。

｢･･････大層なツラしてるじゃねぇか｣

彼女のように優しかった蛇はどこにもいない。
傷だらけで鱗が剥がれ落ち、ところどころ肉が見えていた。
赤く染まっているが、それは自らの血では無いようだ。
チロチロと出す舌もいつもより赤い。
それに口から鮮血が滴り落ちているし、瞳はもう、以前のそれではない。
向こうで煙が立っているところを見ると、暴れて、命に牙をかけたのがわかる。
哀しくて淋しくて辛くて。
それを上回る憎しみが、そうさせている。

ローはかつての自分を見ているようだった。
やるせない怒り、何もしてやれなかった自分への憎しみ。
自暴自棄になるが発散しても収まることはない。
だから、蛇がこれからどうしたいのかよくわかった。

家を丸呑みできそうなほど大きな口が開く。
上顎から生えた2本の牙から毒が滴り落ちる。
死臭がした。
口の中には人間の血が飛び散っていて、なんだかわからない肉片が張り付いていた。
蛇は普通獲物を丸呑みにするが、この惨事を見ると不要に噛み付いて食いちぎって獲物が1番苦しむ方法を選んで殺している。
そして今、ローを食い殺そうと牙を降ろす。
非常にゆっくりに見えたのは死が身近に迫っているからだろう。

｢｢キャプテンｯｯ!!!!｣｣

『･･･』

視界の端に満身創痍で傷だらけの船員達が見えた。
相変わらず無愛想な彼女の弟も。
彼は不満たらたらな息を吐き、ローと毒牙の間に黒い剣を投擲げる。
剣が彼の手から離れるとまるでブラウン管テレビの電源が落ちたようにﾊﾟｯと消え、そして豆電球を点けた時のようにローの目の前へ現れる。
近未来型の大剣は金属音を響かせながら空中に漂い、存在感を出していた。
ローは焦点を合わせ、弾かれたようにその剣の柄を握る。
瞼の裏で彼女の勇ましい構えと流麗な皇宮剣術を思い出しながら両手で握り直す。