Bouquet. 2 ( ar×in shortstory )

リナリア ページ1

※学パロ
※ar←inの片思い


in side .



今年も学校中の男女がそわそわし始める、この季節がやってきた。


｢ねえ、今年何作る？｣
｢私はガトーショコラ作る予定｣
｢すごっ！有岡くんにあげるんでしょ？頑張れ！｣
｢うんっ、気合い入れないと！｣


…あ、あの子、大ちゃんにあげるんだ。

廊下をすれ違った女子達から聞こえたそんな会話。
教室の自分の席に座って、大きなため息をついた。


｢伊野ちゃん元気ないじゃん！どうしたの？｣

｢！大ちゃん、おはよう｣

｢はよーっ、いや〜教室はあったかいね〜｣


今日もキラキラ、眩しい笑顔。

サラサラの茶髪から覗くシルバーのピアス。
ひとつ空いたシャツのボタンに緩んだネクタイ。

クラスの人気者、俺が高校で初めてできた友達の大ちゃん。


｢あっ、分かった！
バレンタイン近いからそわそわしてるんでしょっ？｣

｢…もうっ、そんなんじゃないよ｣


人の気も知らないで…

少しムッとして見せると、大ちゃんがごめんごめん！と笑って俺にお菓子を差し出した。


｢…キャラメル？｣

｢うん！元気のない伊野ちゃんには、特別に俺の分のおやつ分けてあげる！｣

｢ふふ、ありがとう大ちゃんっ｣

｢お、やっと笑った〜伊野ちゃんは笑顔が1番似合ってるよ！｣


____ 好き。

気が緩んだら口に出してしまいそうになる。


誰とでも仲良くなれる大ちゃんだけど、俺のことは唯一"親友"だと言ってくれる。そんな関係に特別感を感じつつ、ちょっぴり複雑な気持ちにもなった。

それが恋心を自覚したきっかけ。


…ごめんね大ちゃん。

俺は大ちゃんのこと、"親友"なんて思ったことないんだよ。


去年のバレンタインは結局何もあげられなかった。
2年目の今年こそは、勇気を出して渡してみようかな。


…この恋が実るなんて、そんな期待しないから。

お菓子渡すくらいなら、いいよね？


大ちゃんから貰ったキャラメルはほろ苦くて、なんだかちょっと切ない味がした。



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