84 怒り ページ9
23時21分。
座って、まだ一言も発せずにいると
兄「なあ」
やっと兄が話を切り出した。
A「な、なに…？」
兄「お前、仕事何してんの？」
A「…保育士の仕事してるの、この近くの保育園で。お兄ちゃんは？」
兄「何もやってねぇよ。それより______ 」
私の仕事を聞いておいて、興味なさそうに返した兄はすぐに話を変えた。
兄「俺、借金が1000万円あんだよ。」
A「……借金が、1000万…？」
兄「バイト生活しながら競馬とかのギャンブルにハマっちゃってさぁ…(笑)
そのまま借金が増えたってだけの話だよ。
だからさ、貸してくれよ。
まあ、お前は俺の妹なんだから、当然貸してくれるよな」
笑いながら悪びれもなく話す兄。
このとき、頭の中で過去が蘇って。
気付いたの。
あの日とまるで変わっていない、って。
ふつふつと湧いてきた感情は抑えきれなかった。
A「…少しは変わってると思ってたのに」
兄「あ？」
A「自分で借金払えないからお金を貸せ…？
俺の妹だから、当然…？
私を妹なんて一度も思ったことないでしょ！？そんな大金あるはずないじゃない！都合の良いときだけ私を頼って来ないで！！」
初めて兄に反抗した。
自分じゃ、信じられないくらいの声を荒げて。
怖がっていた昔とは違う。
兄「んだよ、面白くねぇーなぁ…
前は俺に従ってたってのに。
お前は俺と違って、変わっちまったんだな」
でも変わっていない兄は
兄「…だけどな、ここで引き下がる訳にはいかねえんだよ。
何が都合の良いときだけ頼るな、だ。
ちょっと大人になったからって、調子乗ってんじゃねーよ！」
A「…痛っ」
やっぱり昔みたいに彼は私に拳を上げて。
A「ちょっと、何してんの！？」
兄「お、3万あるじゃん。」
突然私のバッグから財布を出し、中身のお札を抜き取った。
兄「しょーがねぇから、今日はこれだけで許してやるよ。
まあ、俺は？
お前の少ない月収を一気に削ろうなんて言うほど鬼じゃねぇから？
そこんとこ感謝しろよ？じゃあな」
バタン
怒りで言葉も出なかった。
3万取って？
しょうがないから、これで許してやる？
俺は鬼じゃない？
感謝しろ？
A「っ………ふざけんじゃ、ない……おかしいでしょっ…」
私の怒りは震える手と冷たい床に一気にこぼれ落ちた。
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作者名：神城りお | 作成日時：2015年8月27日 15時
