男性を魅了してしまう血鬼術にかかってしまったわけですが

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嬉しいと言った言葉を並べて、彼女の手を取り茶屋へと入ろうとする。その行動に、遂に物理的手段に訴えてきたとAは考え、必死の抵抗を始めた。


「やめてください！私お金もってませんよ！？しかも天涯孤独の身です！」


突然の重い身の上話をされ、男性が怯んだ時に、一人の男が間に入ってくる。それは、Aもよく知っている人物だった。


「冨岡さん！」

「彼女は嫌がっているだろう」

「す、すみません…！」


突然乱入してきた男の有無を言わさぬ威圧感に、声をかけていた男性は急いでその場を逃げ出した。


Aは攫われずにすんだことへの安心感から脱力し、しきりに冨岡への感謝を述べる。


「ありがとうございます…！私攫われそうになって…」

「…それならもっと痛みつけるべきだったな」


予想だにしていなかった返事と、その声の低さに驚きAが冨岡の顔を見上げると、そこには冷たい怒りが浮かべられていた。


「あ、あの、冨岡さん…？」

「何だ？」

「そんなに怒らなくても…」


そう気まずそうに笑うAに、冨岡はその頬を両手で挟み自分の方へ向かせる。そして、その瞳を両の目で捉え、Aを更なる驚愕へと誘んだ。


「好いている人間の心配をするのはおかしいか？」

「はい？」

「愛している、A」


そのまま近づいてくる端正な顔に、Aはようやく自分の身に降りかかった異常の片鱗を理解することが出来た。

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