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目を塞ぎどうしようかと考えるAと、何も言わず佇む宇髄。何とも言えぬ空気が二人の間に流れる。その沈黙を破ったのは、宇髄の方だった。
「…何やってるのか聞かないでおくが、胡蝶はどこか知ってるか?」
「えっ」
「だから、胡蝶は」
聞き返された宇髄は、声を大きくして問い直す。しかし、Aが聞き返したのは、聞き取れなかったからではない。宇髄が、自身を見ることにより魅了されてしまった他の四人のように、常では有り得ないことを言ってこなかったからだ。
「う、宇髄さん!」
「何だ?」
「私にドキドキしたり、私を好きになったりしない!?」
「はぁ?」
傍から見れば、飛んでもない自惚れ屋の発言だが、今のAにとっては、とても大切な確認だった。
事情を知らない宇髄は、ただ驚き呆れたように言葉を返す。
「お前そんな自意識過剰だったか?」
率直な物言いに、Aは機嫌を損ねるどころか手を目から離して抱きつきそうな程の勢いで宇髄に迫る。
「本当の本当に私を見てもドキッとしないの!?」
「うおっ、ド派手に近いな」
「ねえ!」
「だー!お前が俺に惚れることはあっても、俺がお前に惚れることはねえよ!」
「ですよね!」
宇髄の発言も中々の自意識の高さが垣間見得るが、そう言われても嫌味に思えない人間としての魅力が彼にはあった。Aはひたすらに、納得したように頷く。
「どうしたんだよ、A」
「あ!そうだ、私隠れなきゃ…」
「え?おい!」
そのまま近くにあった障子を開け、Aは宇髄を引きずり込む。そして、自身にかけられた血鬼術について説明し始めた。
「それは…ド派手におもしれえ血鬼術だな!あの不死川がお前に惚の字だっつうのか!」
ケタケタと笑いだした宇髄に、Aは焦った声を出す。
「笑い事じゃないよ!宇髄さんは不死川さんのあの様子を見てないからそんなこと言えるんだよ?もう、本当に同じ顔した別人って感じで…。というか、何で宇髄さんは普通でいられるんだろう?」
「そりゃあ、お前、あれだよ」
「何?」
「おい!あんまこっち見んな」
「何で?」
「恐らく俺は効いて無いんじゃなくて、効きづらいだけだからだ。Aの目を見てると、気持ちから離れて鼓動が早くなるんだよ」
宇髄は自身も目を逸らす。つまりは、恋に落ちる一歩手前の状態になってしまうということだ。Aは配慮が足りなかったことを謝罪しつつ、宇髄が効きづらいのであろう理由を問う。
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もみじ - めちゃめちゃ面白かったです!! (2022年8月1日 19時) (レス) @page30 id: 32f65dbc25 (このIDを非表示/違反報告)
ハッシュタグ(プロフ) - ななしさん» お読みいただきありがとうございます。今でも反応をいただいており、私としてもお気に入りの作品ですので、そう言っていただけて嬉しい限りです。もしまた機会があれば、読んでいただけましたら幸いです。 (2022年4月9日 0時) (レス) id: bcf3124c84 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - 面白くて一気読みしました!語彙力が凄くて羨ましいです...!シチュエーションも神でした!これからも応援しています!! (2022年4月2日 17時) (レス) id: 05cc864757 (このIDを非表示/違反報告)
ハッシュタグ(プロフ) - 水城舞梨亜さん» 喜んでいただけて良かったです!リクエスト本当にありがとうございました…! (2020年10月22日 11時) (レス) id: bcf3124c84 (このIDを非表示/違反報告)
水城舞梨亜(プロフ) - いいいい伊黒さんかっこいい!!!です!\(^o^)/伊黒さんは、私の推しなんですが、こんなにかっこよく書いていただけて嬉しいです!!(*´ω`*)後、夢主ちゃんがかわそう…でもなんかすごいです!(語彙力)感情が無いようであって。凄く、本人にあってると思います! (2020年10月22日 8時) (レス) id: 0e4689ecab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハッシュタグ | 作成日時:2019年11月30日 19時