24 ページ26
と、そんな風に想いが通じ合った恋人同士が、二人の世界を展開するのを、他の柱達は呆然と見ていた。Aの両隣にいた煉獄と甘露寺も、惚れ気にあてられそうで避難している。
甘露寺は顔を真っ赤にして、「素敵な恋を間近で見れるなんて!」と嬉しそうだったが、他の者はここ数分で十年分の疲労を感じた、とばかりに何処か疲れた顔をしている。
「僕知ってる、こういうの『当て馬』って言うんだよね」
一番年少である時透が、的を得たことを言う。それに対してしのぶは、お互いしか見えていない同僚二人に少し呆れた目を向けながらも、時透の言葉のトゲを抜くように援護する。
「まあ、でも。『馬に蹴られ』なかっただけマシということにしておきましょう」
そう笑い、しのぶは皆で食事を取ろうと提案した。何とも言えない疲労が襲ってきていたので、それもいいだろう、とぞろぞろ八人で食事処へ向かった。
それに気がついたAは人前だったことを思い出し、恥ずかしそうに冨岡と距離を取る。
「みんな!どこいくの!?ご飯!?ほら!冨岡さんも!ご飯行きましょうよ!」
勢いだけで押そうとするが、冨岡も一枚岩ではない。どこか拗ねるような声色を出す。
「…義勇だ」
「はい!?」
「恋人なのだから、当たり前だ、A」
「っ!ぎ、義勇、さん!取り敢えず離れ」
再び近づいてきた冨岡を、ときめきながらも遠ざける。近寄ることを阻止する腕など物ともせず、冨岡は距離を詰め、嬉しそうに微かに唇を綻ばせた。
「ようやく呼んでくれたな」
「あああああああ!!ずるい!そんな嬉しそうな顔するなんてずるい!」
「ずるくない」
悪びれもなく無表情でそう言って、冨岡は優しくて甘い接吻を、Aの唇に降らすのであった。
『男性を魅了してしまう血鬼術にかかってしまったわけですが』 完
1744人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もみじ - めちゃめちゃ面白かったです!! (2022年8月1日 19時) (レス) @page30 id: 32f65dbc25 (このIDを非表示/違反報告)
ハッシュタグ(プロフ) - ななしさん» お読みいただきありがとうございます。今でも反応をいただいており、私としてもお気に入りの作品ですので、そう言っていただけて嬉しい限りです。もしまた機会があれば、読んでいただけましたら幸いです。 (2022年4月9日 0時) (レス) id: bcf3124c84 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - 面白くて一気読みしました!語彙力が凄くて羨ましいです...!シチュエーションも神でした!これからも応援しています!! (2022年4月2日 17時) (レス) id: 05cc864757 (このIDを非表示/違反報告)
ハッシュタグ(プロフ) - 水城舞梨亜さん» 喜んでいただけて良かったです!リクエスト本当にありがとうございました…! (2020年10月22日 11時) (レス) id: bcf3124c84 (このIDを非表示/違反報告)
水城舞梨亜(プロフ) - いいいい伊黒さんかっこいい!!!です!\(^o^)/伊黒さんは、私の推しなんですが、こんなにかっこよく書いていただけて嬉しいです!!(*´ω`*)後、夢主ちゃんがかわそう…でもなんかすごいです!(語彙力)感情が無いようであって。凄く、本人にあってると思います! (2020年10月22日 8時) (レス) id: 0e4689ecab (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ハッシュタグ | 作成日時:2019年11月30日 19時