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1 胡蝶しのぶ ページ2

「よろしくお願いしますね、Aさん!」
「よろしくお願いします!」
「…敬語じゃなくて大丈夫ですよ?」

私が言っても説得力無いですかね、と胡蝶しのぶ様は笑った。鈴を転がしたような笑い声が鼓膜に響き、その懐かしさに涙が零れそうになる。

蟲柱を冠するほど強く、いつも女神のように優しく笑い、華奢な体で鬼を突く。毒で鬼を殺し、薬で人を癒す。そんなお方だった。蝶屋敷でお見かけする姿は、いつも何処か儚げで、ふいに飛び立ってしまいそうなそんな危うさがあった。

でも、目の前で笑う彼女は美しさそのままに、活力に溢れたお茶目な少女だ。転校生の私を心配し、学校案内を引き受けてくれるぐらい優しい。

「分かったよ、胡蝶さ…しのぶさん」
「はい!ではこの階からご案内しますね」
「うん!」

危ない、胡蝶様と呼んでしまうところだった。普通に同級生にそんな風には呼ばれたら、私なら引いてしまうだろう。第一印象が最悪になってしまうところだった。

「それでは上に行きましょう」
「うん」

順調に説明が進んでいく。放課後だからか、部活動で残っている生徒達を疎らに見かけるくらいで、校舎はどこか静かさを孕んでいる。

「そしてこの階には美術室があります」
「美術の授業は三年生は無いんだよね?」
「ええ。ただ、あの教室は時々爆破されるので、下を通る時は気をつけてくださいね」
「はい?」
「では次行きましょうか」

私の疑問を置き去りに、胡蝶様は進んでいく。

「Aさんは部活には入部予定はありますか?」
「ううん。今は引っ越したばかりで家もちょっとゴタゴタしててね」
「そうなんですね。お家の方が落ち着いて、もし良かったらフェンシング部と薬学研究部の見学に来てください」
「しのぶさんはそこに?」
「ええ。楽しいですよ」

前世と同じ特技をお持ちのようだ。薬学研究部…よく学校から部の創設が許されたな…。

そう冷や汗をかきつつも、笑顔で返事をする。

「他にも剣道部や吹奏楽部、華道部、バレー部、ああ、弓道部なんて珍しいですかね」
「弓道部まであるんだね。じゃあ、門を入って右手側にあった建物が?」
「そうです」

本校舎とは、渡り廊下で繋がっていると言う。体育の授業で使用する体育館もそうらしい。

「案内してくれて本当にありがとう!」
「いいえ。では、また明日」

下駄箱で別れを告げる。前世とは異なる関係性に、違和感を抱きつつもこれからを予感し、私は嬉しくなった。



(笑顔の素敵な同級生との話)

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おにゃんこ(プロフ) - コメント失礼します。私この作品大好きです!これからも頑張ってください (2020年2月14日 17時) (レス) id: efb665c293 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハッシュタグ | 作成日時:2019年11月14日 18時

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