5 時透無一郎 ページ6
ああ、今日も平和だな。
少し前まではこれすら『私の家族は死んでしまったのに、何故世界にはこんなにも幸せな人が多いのだろう』と妬んだ。しかし、今はそうじゃない。
鬼がいて、それが人を喰らう残酷な世界であるにも関わらず、こんなにも幸せそうな人が多いことが嬉しくてたまらない。道行く人に手を振り笑いかけたいくらいに。それは流石に不審者極まりないので出来ないので、ぐっと抑える。
道の左右には様々なお店が立ち並び、そこには色とりどりの品物が所狭しと並んでいる。今は任務が入っていないし、何処か立ち寄ろうかと思っていると、前方からこの平和な景色と不釣り合いな怒鳴り声が響いてきた。
「どこ見とんのじゃ!!ああん!?」
下品で聞くに耐えない。周りの人も笑顔を消し、怪訝そうに様子を伺っている。
私は自分に事態が収束できないものかと、人混みを掻き分け前に出る。そこにいたのは血管が浮き出るほど憤慨している男を合わせて三人の男と、相対する髪が長い少女だった。
少女は顔は見えないが、着ている服も体に合っていないのか裾が余っており、尚更華奢にみえる。
大の大人が寄って集って、と割って入る。
「やめてください。見苦しいですよ」
そう言えば相手は分かりやすく血の気立つ。
「ああん?元はと言えばその餓鬼が俺にぶつかってきたんだよ!」
「だからそれは謝ったでしょ」
背に隠した少女が声を上げた。いや、少女じゃない。しっかりとした少年の声だ。私はその事実に驚き、思わず振り返った。
「あの!!謝った方がいいですよ!!」
その顔を認識した瞬間、口をついて出たのはチンピラに対する忠告だった。
「……聞き間違えか?俺が謝んのか?俺が?その餓鬼じゃなくてか?」
「この女調子乗ってんなあ」
「もう餓鬼共々やっちまうか?」
そりゃ怒るだろう。いきなりしゃしゃり出てきた女に、如何にも華奢で少女とさえ見える少年に謝ることを推奨されたのだ。しかし、この人には絶対手を出さない方がいい。絶対に。
「ごめんなさい!」
一言だけ謝って、三人全員を手刀で昏倒させる。突然の事だったため、相手は反応も出来ずに崩れ落ちた。私は弱い、だが訓練もしていないような人相手なら楽勝だ。
「…ありがとう」
後ろの少年、霞柱の時透無一郎様はそれだけ残すとあっという間に居なくなってしまった。早すぎる。
「少女かと思っちゃった…」
声に出さなくて良かったと心の底から思った。
(無口でミステリアスな少年との遭遇)
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ハッシュタグ(プロフ) - ロトさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけ本当に嬉しいです。そして、応援いただきありがとうございます。次回作も、ご期待に添えるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いします! (2019年11月14日 6時) (レス) id: 9cd03d1863 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - 続きです。次回作も勝手ながら毎日読ませていただきます!どちらも今からすごく楽しみです!!無理をしないよう頑張ってください!長々と失礼しました! (2019年11月14日 1時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - コメント失礼します。完結おめでとうございます!この小説を一日の終わりに読むと何だか心が暖かくなってホワホワして大好きでした!!実は完結の文字を見た時、少し寂しかったので次回作の予告を見て安心しちゃいました!長くなったので続きます。 (2019年11月14日 1時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハッシュタグ | 作成日時:2019年10月18日 18時