27 栗花落カナヲ ページ28
風柱の邸宅に着いた。何やら悲鳴が聞こえる気がするが、こんなことで怯んでいては仕方がない。
聞こえないふりをして門をくぐろうとした時、建物の方から一人の少女が歩いてきているのに気がついた。 栗花落カナヲ様だ。真っ直ぐ上げられた瞳に私が映ったのだろうか、 栗花落様は小走りでこちらに向かってきた。
「この間、完治せずに出ていったけど…」
「胡蝶様からいただいたお薬のおかげでこの通り、完治しました!」
「良かった…」
心配そうに微かに寄せていた眉を緩め、 栗花落様はほおっと、温かな笑みを見せた。優しい人たちだ、胡蝶様も 栗花落様も。
栗花落様とは蝶屋敷に入院する際、度々顔を合わせる機会があった。ほとんどは任務でいらっしゃらなかったので、他の隊士よりも話したことのある自信がある。
そこまで思って、自分がどれだけ怪我をしているのか目の当たりにし、不甲斐なさで顔を覆いたくなる。しかし、目の前の 栗花落様は思考が読めるわけではないので、いきなり私がそんなことをしたら、驚いてしまうだろう。
「ご心配おかけして申し訳ないです…。前に任務で助けていただいたこともありますし…」
栗花落様は首を横に振り、気にしないで欲しいと言った。
「いつかきっとこのご恩はお返し致しますので」
そう宣言したものの、具体的にどの様なことで返せばいいのだろう。助けてもらったお返しに、同じことをしようにも、 栗花落様はお強いし、私が彼女の勝てない鬼を倒すことは出来ない。心配してもらったことを返そうにも、そういう気持ちを返すというのはおかしな話だし。
「私はどうすれば…」
「ラムネ…」
「え?」
「私、ラムネが好きだから、またもらえると嬉しい…」
恥ずかしそうに頬を赤らめて、 栗花落様はそう言った。しかし、ラムネが命を賭けた『親切』に対するお礼として正しいのだろうか。そう疑問を呈す私に、 栗花落様は首を振る。
「正しいなんて無いと思う」
「… 栗花落様に対するお礼ですから、 栗花落様の求めるものでお返しするのが筋ですね」
本当にそれでいいのかな、と思いつつも、受け取るのは 栗花落様なのだから、と納得する。それにこの方の言う通り、お礼に正しいも間違っているものきっと無いのだ。
「では、必ずお持ちしますので」
「ありがとう」
向けられた可愛らしい笑顔に釣られて、頬が緩むのが感じられた。
(心の声を聞くようになった少女との再会)
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ハッシュタグ(プロフ) - ロトさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけ本当に嬉しいです。そして、応援いただきありがとうございます。次回作も、ご期待に添えるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いします! (2019年11月14日 6時) (レス) id: 9cd03d1863 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - 続きです。次回作も勝手ながら毎日読ませていただきます!どちらも今からすごく楽しみです!!無理をしないよう頑張ってください!長々と失礼しました! (2019年11月14日 1時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - コメント失礼します。完結おめでとうございます!この小説を一日の終わりに読むと何だか心が暖かくなってホワホワして大好きでした!!実は完結の文字を見た時、少し寂しかったので次回作の予告を見て安心しちゃいました!長くなったので続きます。 (2019年11月14日 1時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハッシュタグ | 作成日時:2019年10月18日 18時