9話 ページ9
「…も、もしかして…昔の私のこと…知ってるの…?」
何かを察したのか、Aは目を見開くと少しだけ震えた声でそう尋ねてきた。
「うん…そうだよ。」
僕が絞り出すようにそう言うとAは途端、僕に頭を下げてきた。
「ご、ごめんなさい…まさか私のこと知ってる人に会えるなんて思ってもなかったから…。」
「いや、僕の方こそいきなり話ごめんね…。」
急いでAに頭を上げるように促す。
Aは少しだけ渋りながらも顔を上げてくれた。
「…ここだと人目に付くから、別の場所で話さない?」
「それもそうだね…。」
僕達二人にはかなりの視線が突き刺さっていた。
新入生代表の挨拶をしていた聡明な美人が、学部の違う男子生徒に頭を下げていたら不思議に思わないはずがない。
Aも周りからの視線に気がついたようで、少し気まづそうにしながらもその場を二人で後にした。
.
並んで歩いて気がついた。僕達には昔はそんなに変わらなかった身長に差が生まれた。
横を振り向けばすぐそこにあったAの顔が今では少しだけ見下ろさないと見えなくなった。
逆にAは僕のことを少しだけ見上げて話をするようになった。
ほんの些細な変化だけれど。それにどこか物寂しさを覚えた。
たった三年。然れど三年。
僕達の間にできた空白の三年間の間に、お互いが随分と変わってしまったみたいだ。
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白霞(プロフ) - いちごアメさん» 応援のお言葉ありがとうございます。面白いとも言って頂けて嬉しい限りですございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月19日 17時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
いちごアメ - とっても面白いです!!これからも頑張ってください (2020年8月18日 21時) (レス) id: 77a7bd0b14 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - つぶやき星のつぶやき女さん» そんな風に言って頂けて光栄の極みでございます!素晴らしい作品だなんて畏れ多い…!最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月18日 12時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
つぶやき星のつぶやき女 - す、素晴らしい!泣きました。とても面白い、悲しい?ような気がして面白かったです。(伝わらないような気がする。語彙力無くて、すいません!)とにかく素晴らしい作品でした。お疲れ様でした。 (2020年8月17日 21時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - くれーぷさん» そのように言って頂けて嬉しい限りです!こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2020年7月28日 19時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白霞 | 作成日時:2020年7月26日 0時