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8話 ページ8

「…っ本当に、君は僕のことを知らないの?
無一郎だよ、時透無一郎。」

「…ごめんなさい。」



申し訳なさそうに謝る彼女を前に、ぎゅっと拳を握り締めるしかできなかった。

そんなはずないじゃないか。



「じ、じゃあ!君はどこに住んでたの?どこの中学出身なの?」



多分半分パニック状態だったんだと思う。それだけショックが大きかった。彼女に、大切な人に忘れられてしまうことが。


咄嗟に口をついて出た言葉。
その言葉が、彼女の顔を歪ますだなんて誰が想像しただろう。



「……わからないの。」

「……え?」



あまりにも的外れな返答に僕は一周まわって冷静さを取り戻した。

ぎゅっと鞄の持ち手を握り締めるAの手は微かに震えていた。



「……私…記憶が、ないの。高校生になる以前の記憶が。事故…か何かで記憶喪失になっちゃって…。」



__記憶喪失。

それならば、Aが僕のことを忘れてしまっていることも辻褄が合う。



…ただ、苗字が違う理由がわからない。
両親の離婚?Aのお母さんの旧姓なんてわからない…。

でも離婚等があれば苗字が変わる可能性だってある。



大丈夫、大丈夫だ。
間違いなく彼女は僕の知っているAだ。


_今はただ、忘れられているだけ。



途端、よくわからない喪失感が覆い被さってきた。

あんなにも恋焦がれてきた相手が目の前にいるのに。今の彼女は僕なんて“赤の他人”という認識なんだ。

こんなにも、誰かに忘れられることが辛いだなんて思わなかった。


ぎゅっと胸が締め付けられた。

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白霞(プロフ) - いちごアメさん» 応援のお言葉ありがとうございます。面白いとも言って頂けて嬉しい限りですございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月19日 17時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
いちごアメ - とっても面白いです!!これからも頑張ってください (2020年8月18日 21時) (レス) id: 77a7bd0b14 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - つぶやき星のつぶやき女さん» そんな風に言って頂けて光栄の極みでございます!素晴らしい作品だなんて畏れ多い…!最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月18日 12時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
つぶやき星のつぶやき女 - す、素晴らしい!泣きました。とても面白い、悲しい?ような気がして面白かったです。(伝わらないような気がする。語彙力無くて、すいません!)とにかく素晴らしい作品でした。お疲れ様でした。 (2020年8月17日 21時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - くれーぷさん» そのように言って頂けて嬉しい限りです!こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2020年7月28日 19時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白霞 | 作成日時:2020年7月26日 0時

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