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29話 ページ29

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「……あの人、私の元旦那…Aの父親はね、暴力が激しい人だった。何か気に入らないことがあればすぐに殴る蹴るをされたわ。私は幼いAを守る為に何度も離婚しようとした。でも、“離婚”っていう言葉を出すだけでAのことを殴るようになった。離婚するならAは俺が引き取るって。きっと養育費の為に。

私には経済力が一切ないから裁判で争っても親権が取れない可能性が高かったの。暴力を受けていたっていう証拠を掴んでおけばよかったのに、あの頃の私はAを守ることしか頭になくて思いつかなかった。本当に馬鹿でしょう?
あの子のことを守るには大人しくあの人の言う通りにしなくちゃいけないって思ってたの。」



じわり。冷や汗が伝う。



Aのお父さんの優しい笑顔は偽りの仮面で、本当はそんな優しい人じゃなかったんだ。

僕達の知ってるAのお父さんは幻想にすぎなかったんだ。



「それからただあの人の暴力に耐えて耐えて耐えて…。Aもだんだん色々わかる年齢になって、あの人から逃げようって言ってくれたの。でも、幼いAを連れて逃げてもすぐ捕まるのがオチだって。きっと捕まったら殺されるって。

そう思って、逃げられなかった…せめて、Aが中学を卒業するまでは耐えなくちゃって…。

私達、決めていたの。Aが中学を卒業したらその日の夜に逃げようって。あの人から、逃げようって…。」



ああ、だから。だからあの卒業式の日、様子がおかしかったんだ。

あんなに悲しそうな、怯えるような瞳だったんだ。なんで、気づいてあげられなかっんたんだろう……。



自分の無力さに心底腹が立つ。悔しい。
ずっと一緒にいた好きな子のさえ、僕は守れなかったなんて。

無意識に血が滲みそうになるくらい拳を握り締めた。



Aのお母さんはとうとう涙を流し始めた。身体も震えてる。

その様子が、どれだけの不安と恐怖の中で生きてきたかを物語っている。



「……それで、Aが記憶を失くしたのはね…。」



どきり。心臓が蠢く。

冷や汗が身体中のいたるところから吹き出てくる。

嫌な、予感がする。





「…あの人の暴力から、私を守ったからなの……。」

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白霞(プロフ) - いちごアメさん» 応援のお言葉ありがとうございます。面白いとも言って頂けて嬉しい限りですございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月19日 17時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
いちごアメ - とっても面白いです!!これからも頑張ってください (2020年8月18日 21時) (レス) id: 77a7bd0b14 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - つぶやき星のつぶやき女さん» そんな風に言って頂けて光栄の極みでございます!素晴らしい作品だなんて畏れ多い…!最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月18日 12時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
つぶやき星のつぶやき女 - す、素晴らしい!泣きました。とても面白い、悲しい?ような気がして面白かったです。(伝わらないような気がする。語彙力無くて、すいません!)とにかく素晴らしい作品でした。お疲れ様でした。 (2020年8月17日 21時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - くれーぷさん» そのように言って頂けて嬉しい限りです!こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2020年7月28日 19時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白霞 | 作成日時:2020年7月26日 0時

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