27話 ページ27
表情のベッドの上で眠るAは、ただ眠っているだけのように見えた。
しかし腕には点滴を打つ為の無数の針が刺さっており、見るだけで痛々しい光景だった。
「……どうして……。」
「……飲酒運転の車に撥ねられてね…幸い命に別状はなかったし、一度目を覚ましてるの。
今はぐっすり眠っているだけ。」
だから心配しないで、とAのお母さんは笑った。でもその顔にはどこか影が落とされていた。
命に別状はないと言っても心配なものは心配なものだろう。現に僕だって、命に別状はないって聞いて安堵したけれど不安が拭いきれたわけじゃない。
「…大きく、なったのね。もう三年振りかしら…。」
「はい。……あの、今聞くことじゃないとはわかってますけど……。なんで、何も言わずにあの場所からいなくなってしまったんですか?」
Aのお母さんはその言葉に肩を揺らした。
俯いて服の裾をぎゅっと握り締めている。
「お願いです…!教えてください…っ」
「……。」
口を噤んだまま、Aのお母さんは何も答えなかった。
ただ何かをひた隠しにするような、そんな表情をしていた。
「……Aに、嘘、ついてたんですよね?幼い頃に離婚してたとか…それに、Aの失くした部分の記憶についても教えなかったって…学校とか友達とか住んでい場所とか…っ!
なんでですか?答えてください!Aには、知る権利があったはずです!なのになんで、なんでそんな嘘を…。」
我慢できなかった。眠っているAの隣で声を荒らげてしまったことは後悔してる。
でも、どうしても許せなかった。
意味のわからない嘘をついて事実をひた隠しにしていたこの人が。Aが知りたがっていることを知らせてくれなかったこの人が。
わかってる。Aのお母さんにだって彼女なりの理由があったということは。
でも、だからと言って自身の娘に嘘をつくなんて良いことじゃない。
161人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白霞(プロフ) - いちごアメさん» 応援のお言葉ありがとうございます。面白いとも言って頂けて嬉しい限りですございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月19日 17時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
いちごアメ - とっても面白いです!!これからも頑張ってください (2020年8月18日 21時) (レス) id: 77a7bd0b14 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - つぶやき星のつぶやき女さん» そんな風に言って頂けて光栄の極みでございます!素晴らしい作品だなんて畏れ多い…!最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月18日 12時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
つぶやき星のつぶやき女 - す、素晴らしい!泣きました。とても面白い、悲しい?ような気がして面白かったです。(伝わらないような気がする。語彙力無くて、すいません!)とにかく素晴らしい作品でした。お疲れ様でした。 (2020年8月17日 21時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - くれーぷさん» そのように言って頂けて嬉しい限りです!こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2020年7月28日 19時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:白霞 | 作成日時:2020年7月26日 0時