24話 ページ24
日も傾き始め、そろそろ帰る時間が来てしまった。
名残惜しさが残る中で、Aが最後に観覧車に乗ろうと言ってきた。
よくある少女漫画みたいな終わり方だな、と思ったのは僕だけの秘密。
もう閉園時間も近かったことから列に並んでいる人も少なく、すぐに乗ることができた。
僕とAは向かい合って座る。夕陽に照らされた彼女の横顔が酷く綺麗だと思った。
「今日はここに連れて来てくれてありがとう。すごく楽しかった。」
外の景色を眺めていた視線が、気づけば僕に移っていた。
どきり。心臓が波打つ。
その綺麗な瞳に捕らわれただけで僕はその場から動けなくなる。永遠にこんな時間が続けば良いのに…そう思ってしまう。
「私、まだ全然時透君のこと思い出せてないから信憑性はないかもしれないけど。貴方のことが、本当に大切だった気がするの。」
どことなく、侘しさを纏うAは僕に向かってそう言った。
「もうすぐ、頂上だね。」
「…うん。」
Aは僕の目を見たままそう呟いた。
もうすぐ、一番高い場所に差し掛かる。
二人だけの穏やかで心地良い時間が終焉へと向かっていく。
「…ねぇ、時透君はこの観覧車のジンクスってし知ってる?」
「…ジンクス?聞いたことないや。」
「…ふふ、なら、良かった。」
そして、一番高い、一番綺麗に街を見下ろせる場所に差し掛かった時。
僕達の視線は、絡み合ったままだった。
どことなく熱を帯びるこの視線を離したくないと、心の奥から叫び声を上げていた。
妙に神秘的で儚い時間だった。
.
.
密かなジンクス
観覧車が一番に高いところに上がった時に見つめ合っていたら、両想いになれる、かもしれない
162人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白霞(プロフ) - いちごアメさん» 応援のお言葉ありがとうございます。面白いとも言って頂けて嬉しい限りですございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月19日 17時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
いちごアメ - とっても面白いです!!これからも頑張ってください (2020年8月18日 21時) (レス) id: 77a7bd0b14 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - つぶやき星のつぶやき女さん» そんな風に言って頂けて光栄の極みでございます!素晴らしい作品だなんて畏れ多い…!最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月18日 12時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
つぶやき星のつぶやき女 - す、素晴らしい!泣きました。とても面白い、悲しい?ような気がして面白かったです。(伝わらないような気がする。語彙力無くて、すいません!)とにかく素晴らしい作品でした。お疲れ様でした。 (2020年8月17日 21時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - くれーぷさん» そのように言って頂けて嬉しい限りです!こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2020年7月28日 19時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:白霞 | 作成日時:2020年7月26日 0時