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15話 ページ15

しんみりと思い空気になってしまった中でこれ以上の話は今はしない方が良いと悟り、僕は席から立ち上がった。



「…今からAを連れて行きたい場所があるんだ。」

「連れて行きたい場所…?」

「うん、行こう。記憶を取り戻すきっかけになれるかもしれない。」



Aの手を取ると僕達はその場を後にした。



「と、時透君…あの…手……。」



振り返ると恥ずかしそうに顔を赤らめるAの姿があった。

小さいころは散々繋いでたのに。こんなにも気恥しそうな反応をされるとこっちが照れてしまう。



「なーに?恥ずかしいの?」

「い、いや…。」



変なところで意地張るところも変わらない。
昔から頑固だったしなぁ。


熟れた林檎のように真っ赤な顔をしているAを見て胸が締め付けられる。

今だけ、今だけで良いから。
君を近くに感じていたい。








.








.








「…ここって…。」

「中学だよ。」



僕がAを連れて来たのは僕達が通っていた中学校。

昨日電話で訪ねても良いか聞いたところ、卒業生なら大歓迎だと言って貰えた。



散々通っていたところなのに三年ぶりに来るとやっぱり懐かしい。でも、校庭の端っこに佇む桜の大木の凛々しさは変わっていない。



「私、ここに通ってたんだ…。」

「そうだよ。」



好奇心旺盛に辺りをキョロキョロと見回す姿が可愛らしくて仕方がない。

大人びてしまったと思ったけれど、まだまだ昔の幼さを残していることに少し安堵した。



「それじゃ中に入ろっか。」

「入って良いの?」

「許可は事前に取ってるからね。」



Aはありがとう、と言うと少し緊張した面持ちになった。

もしかしたら何かわかるかもしれないという期待と、思い出せない不安を含んだような表情だった。



__大丈夫、僕がついてるから。

言いたかったその言葉は、温い空気に溶けてしまった。

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白霞(プロフ) - いちごアメさん» 応援のお言葉ありがとうございます。面白いとも言って頂けて嬉しい限りですございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月19日 17時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
いちごアメ - とっても面白いです!!これからも頑張ってください (2020年8月18日 21時) (レス) id: 77a7bd0b14 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - つぶやき星のつぶやき女さん» そんな風に言って頂けて光栄の極みでございます!素晴らしい作品だなんて畏れ多い…!最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月18日 12時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
つぶやき星のつぶやき女 - す、素晴らしい!泣きました。とても面白い、悲しい?ような気がして面白かったです。(伝わらないような気がする。語彙力無くて、すいません!)とにかく素晴らしい作品でした。お疲れ様でした。 (2020年8月17日 21時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - くれーぷさん» そのように言って頂けて嬉しい限りです!こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2020年7月28日 19時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白霞 | 作成日時:2020年7月26日 0時

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