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1話 ページ1

あれは、中学三年生の卒業式の日だった。







.

















僕はいつも近所に住む幼馴染のAと一緒に登下校をしていた。兄さんも一緒に三人で。

Aはよく笑う女の子だった。暖かくて一緒にいられるだけで安心する。まるで陽だまりのような少女だった。



何か嫌なことがあっても次の瞬間には楽しそうに笑っている。そんな前向きで真っ直ぐな彼女が大好きだった。


この気持ちが何なのか聞かれたら、恋なんだと思う。ずっとずっとずぅーっと好きだった。

大切で仕方なくて、はじめて自分の手で守りたいと思った人だった。








__あの日、卒業式の日も、僕らは一緒に帰っていた。



ただ、僕の気持ちを知ってる兄さんは「卒業式くらい二人で帰れ」と、僕に気を利かせてくれて違う友達と帰った。だから、その日は二人で並んで帰ったんだ。

いつもと変わらない通学路なのに、その日はやけにアスファルトが透き通って見えたんだ。



「もう高等部だなんて早いよね。」

「…そうだね。」



あの日の彼女は、少しおかしかった。


中高一貫校なんだから同じメンバーで高等部に上がれるのに、酷く悲しそうな顔をして卒業証書を受け取っていた。

周りの友人達からも「なんでそんなしんみりした顔してるの」と茶化されていた。



でも昔から酷く感情移入しやすいところがあったから、“卒業する”という肩書きに囚われて寂しんでいるのかな、くらいに思ってた。



「高等部入っても同じクラスになれると良いね。」



勇気を出して、言った言葉だった。
これじゃあまるで、ずっと一緒にいたいって言ってるようなものじゃんか…。

顔に熱が集まるのがわかる。暑い季節でもないのに酷く汗ばんでワイシャツが張り付く。熱い。


恐る恐る、Aの方を見る。



少し驚いたような雰囲気を醸し出した彼女は、すぐに優しい表情をした。



「私も。同じクラスになれたら良いなって思ってる。」



ふわりと笑う彼女に、酷く魅せられた。

そんなこと物理的には無理なのに、心が取り込まれたような気がした。

2話→



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白霞(プロフ) - いちごアメさん» 応援のお言葉ありがとうございます。面白いとも言って頂けて嬉しい限りですございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月19日 17時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
いちごアメ - とっても面白いです!!これからも頑張ってください (2020年8月18日 21時) (レス) id: 77a7bd0b14 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - つぶやき星のつぶやき女さん» そんな風に言って頂けて光栄の極みでございます!素晴らしい作品だなんて畏れ多い…!最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月18日 12時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
つぶやき星のつぶやき女 - す、素晴らしい!泣きました。とても面白い、悲しい?ような気がして面白かったです。(伝わらないような気がする。語彙力無くて、すいません!)とにかく素晴らしい作品でした。お疲れ様でした。 (2020年8月17日 21時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - くれーぷさん» そのように言って頂けて嬉しい限りです!こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2020年7月28日 19時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白霞 | 作成日時:2020年7月26日 0時

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