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「体調はどー? 咳とか、頭痛いとか、お腹痛いとか、気持ち悪いとか、」


「大丈夫だよ。心配症だね、ホント」


「心配症になるくらい、心配かけたの誰だよ」


「んー…俺だね」



そう言って、『彼奴』は笑った。


本当にこいつ、病気か? って思わせるくらい、いつも通りのアイドルスマイルだ。



「ねえ、そんなに毎日お見舞い来なくていいよ」


「なんで?」


「負担になりたくないんだよね」


「負担なんかじゃない。俺が来たいから来てるんだよ」


「…ん、そっか、」



…ああ、まただ。最近見ることが多くなった、『彼奴』の引き攣ったような笑顔だ。


そして、その笑顔を見せたときは必ずと言っていいほど、俺とお揃いで買った懐中時計の時間を見るんだ。


秒針が動く様を眺めて、目を閉じて、いつもの『彼奴』に戻る。



「ほら、そろそろ帰らないと明日の仕事に響くよ」


「…ああ、わかった。また明日終わったら来る」


「ありがとう」



そう言った『彼奴』を尻目に、俺は病室の扉に手を掛けた。


…明日ここに来たとき、こいつがいなかったらどうしよう。


こいつはなんてことない顔をしているが、こいつの病状をメンバー全員で聞いたとき、ニカ千が泣いた。


タマやミヤタ、マネージャーなんかも。皆が泣いていた。


勿論俺も、声を上げて泣いた。


それくらい、こいつの病気は深刻で、今でもこいつの寿命を刻一刻と奪っている。


…俺は一体いつまで、お前と時を刻めるのだろうか。

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作者名:ぽむぽむ | 作成日時:2020年4月12日 1時

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