03 ページ3
「体調はどー? 咳とか、頭痛いとか、お腹痛いとか、気持ち悪いとか、」
「大丈夫だよ。心配症だね、ホント」
「心配症になるくらい、心配かけたの誰だよ」
「んー…俺だね」
そう言って、『彼奴』は笑った。
本当にこいつ、病気か? って思わせるくらい、いつも通りのアイドルスマイルだ。
「ねえ、そんなに毎日お見舞い来なくていいよ」
「なんで?」
「負担になりたくないんだよね」
「負担なんかじゃない。俺が来たいから来てるんだよ」
「…ん、そっか、」
…ああ、まただ。最近見ることが多くなった、『彼奴』の引き攣ったような笑顔だ。
そして、その笑顔を見せたときは必ずと言っていいほど、俺とお揃いで買った懐中時計の時間を見るんだ。
秒針が動く様を眺めて、目を閉じて、いつもの『彼奴』に戻る。
「ほら、そろそろ帰らないと明日の仕事に響くよ」
「…ああ、わかった。また明日終わったら来る」
「ありがとう」
そう言った『彼奴』を尻目に、俺は病室の扉に手を掛けた。
…明日ここに来たとき、こいつがいなかったらどうしよう。
こいつはなんてことない顔をしているが、こいつの病状をメンバー全員で聞いたとき、ニカ千が泣いた。
タマやミヤタ、マネージャーなんかも。皆が泣いていた。
勿論俺も、声を上げて泣いた。
それくらい、こいつの病気は深刻で、今でもこいつの寿命を刻一刻と奪っている。
…俺は一体いつまで、お前と時を刻めるのだろうか。
51人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぽむぽむ | 作成日時:2020年4月12日 1時