叶ってはいけない恋〜戸塚祥太〜

#41 ネクタイ ページ40

うつむき黙り込む私

袋からビールを出して栓を開ける戸塚さん


無機質な音だけが二人の空間に広がる




"手を繋いだことは二人だけの秘密な"



そう言い合ったのもこの場所だった

なのに、その時とは状況が違いすぎて、
その時のことが今となってはもう遠い昔の事ように感じる


ビールを一口飲むと、戸塚さんは私の腕を撫でるように触った



いきなり触られてゾクゾクっとする感覚



「なぁ…これ何だよ」



戸塚さんは、決まって、二人だけになると、声色を変える


少し低くなる声はハスキーさが増す…一言で表すならセクシー

とにかくその声は私の心をドキドキさせることに違いはなかった



『っこれは……その、さっき、河合さんが…』



恐る恐る戸塚さんの表情を伺うと、さっきよりも怖い顔をしている


心拍数と同時に痛みの数も増える


何か怒ってるのかな…と不安になる心と反対に
戸塚さんはとても優しい手つきで
スルリと手首のネクタイを外してくれた



「跡めっちゃついてるし、何してんだよあいつ…」



どうやら、その怒りの表情は河合さんに向けてのものだったみたいで

それに加えて、暖かく手首を撫でられて
不覚にも心臓の激しい鼓動は落ち着いた



『戸塚さん……』



名前を呼んだだけで、無意識に、涙が出る


今まではずっと受け身だった
何もかも、全部、流れに流されるまま生きてきた


でも今は違う

この話は私から始めたい

私が言いたい


どんな風に思われててもいい、もうバレちゃったんだから、避けて通れる事じゃない

逆に考えたら、これが、今が、この時が


戸塚さんに気持ちを伝えるチャンス

気持ちを伝えて、振られて、この思いときっぱりを告げる時だ＿＿＿



『あのっ…私…』

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