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「すみません、やめてもらってもいいですか」
低い声が横からして、キッチン用の白い制服の袖が視界に入った。
「……うら、たさん」
止めに入ったのは、うらたさんだった。
彼は私を掴んでいた男の手をひっぺがすと、私を庇うようにして、男性客との間に割って入った。
「あ?誰だよ、兄ちゃん。金払ってんだから文句言われる筋合いはねえだろ」
「ここはそういう店じゃないっつーの。そういうことしたいなら、ファミレスじゃなくてキャバクラでも行ってろよ」
いままで聞いたこともないような、うらたさんの低い低い声。
「話そうとしただけだろ。バイト風情が首突っ込んでくるんじゃねえ!それとも何だ、兄ちゃん、この姉ちゃんに惚れてるとかか?ん?」
酔っ払った男は逆ギレするだけにおさまらず、うらたさんを煽るようなことまで言ってくる。
私はうらたさんの背中で何もすることができず、後ろでハラハラとしていることしか出来ない。
うらたさんが私を好き?
そんなこと、あるわけない。
彼が以前言った通り、彼にとって私は「かわいい後輩」なのだ。
それ以上でも、それ以下でもない。
「………だったらなんだよ」
唸るようにうらたさんが言ったとき、
「お客様、申し訳ございません。この時間の担当者の佐々木と申します。なにかございましたでしょうか?」
周りがびっくりするくらいの大きい声で佐々木さんが割って入ってきた。
「あ、おう」
男性客は佐々木さんの勢いに気圧されたように、顔をのけぞらせた。
佐々木さんは、その隙にこちらをちらりと見て、事務所で待機するよう顎で指した。
うらたさんはかたい顔をして、佐々木さんに会釈をしたあと、私の腕を引いて足早にその場をあとにした。
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りひと(プロフ) - たまさん» たま様/コメントありがとうございます!またコメントをいただけて嬉しいです!続編のほうも、引き続きよろしくお願いいたします! (2019年12月24日 11時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
たま(プロフ) - こんにちは!グッドイブニング・トウキョウから引き続きずっと読んでいます。坂田さんsideも入れて頂きありがとうございました。これからの逆襲編も楽しみですし、また坂田さんとくっつくのも楽しみにしております。これからも応援しております。 (2019年12月24日 11時) (レス) id: a928baf79e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - shioriさん» shiori様/コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!今後も楽しんで読んでいただけるよう努めて参りますので、応援のほどよろしくお願いいたします! (2019年12月22日 3時) (レス) id: 643f7a330d (このIDを非表示/違反報告)
shiori(プロフ) - 初コメ失礼します!浦田さんのキャラめちゃくちゃいいですね!元々惚れてますけど余計に惚れますね!応援してます!更新頑張ってください! (2019年12月22日 1時) (レス) id: f06d85eb8e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ゆずの実さん» ゆずの実様/コメントありがとうございます!どんどん更新して参りますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします! (2019年12月21日 13時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りひと | 作成日時:2019年12月13日 23時