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ぼくのとなり ページ23

うらさんと夜通しゲームをしてたら、いつの間にか寝落ちて、起きたら日が高く昇っていた。


帰る頃には、もう昼前になっていた。


「また来るわあ」


と言ってアパートを後にする。


「……坂田くん?」


「え、Aちゃん?」


急にかけられた声は、大好きだった君のもの。


そういえば、彼女の家はここだったのかと改めて思う。


彼女は大学に入ってから、綺麗になった。


もともと可愛かったけど、化粧もするようになって、服も大人っぽくなった。


なんだか、俺ばっかりが置いていかれているみたいな気がして、少し寂しくなる。


なにか声をかけなきゃと思いながら、なんにも浮かんで来なくて、ようやく口を開こうとしたところに、


「あ、まだいた。おい坂田、これ、忘れもの……って、A?」


やってきたのは、うらさんだった。


うらさんは、Aちゃんの名を呼んだ。


それも、呼び捨てで。


付き合ってた俺だって、そんなふうに呼んだことがないのに。


つきり、と胸の隅っこに針が刺さるような感覚がする。


「うらさん、Aちゃんのこと知っとるん?」


俺はできるだけ驚いた素振りを見せて、うらさんに問いかけた。


「知ってるもなにも、俺ら同じ大学だし。バイト同じだし。家近いし。そりゃあ、知り合いにもなるだろ。ってか、なんでお前こそこいつのこと知ってんの?」


なんて答えよう、と思って俺はAちゃんを盗み見た。


彼女も同じように思っていたようだった。


元カレです、なんて言ったら、きっとうらさんに余計な気を使わせてしまうだろう。


「俺らは、高校のときの同級生」


とだけ答えた。


「あ、そ。まあ、いいや。A、これから出かけんの?」


うらさんは、一瞬怪訝そうに顔を顰めたが、すぐに戻して、Aちゃんに顔を向けた。


「はい。暇になったので、買い物でも行こうかと思って」


彼女がうらさんの問いかけに素直に頷くと、


「あ、俺も行く。ちょっと待ってて、いま財布持ってくるわ」


と言ってアパートに引き返していった。


ああ、うらさんは、彼女のことが好きなんだ。


すぐにわかった。


こんなの、勝ち目がないじゃないか。


すぐに走ってどこかに行ってしまいたかった。


この場から逃げ出して、泣き喚いてしまいたかった。


それと同時に、もしも、まだ俺に見込みがあるなら、もう一度だけ、Aちゃんに俺のことも見てほしいとも思ってしまった。


息が詰まりそうなくらい、胸が苦しい。

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りひと(プロフ) - たまさん» たま様/コメントありがとうございます!またコメントをいただけて嬉しいです!続編のほうも、引き続きよろしくお願いいたします! (2019年12月24日 11時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
たま(プロフ) - こんにちは!グッドイブニング・トウキョウから引き続きずっと読んでいます。坂田さんsideも入れて頂きありがとうございました。これからの逆襲編も楽しみですし、また坂田さんとくっつくのも楽しみにしております。これからも応援しております。 (2019年12月24日 11時) (レス) id: a928baf79e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - shioriさん» shiori様/コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!今後も楽しんで読んでいただけるよう努めて参りますので、応援のほどよろしくお願いいたします! (2019年12月22日 3時) (レス) id: 643f7a330d (このIDを非表示/違反報告)
shiori(プロフ) - 初コメ失礼します!浦田さんのキャラめちゃくちゃいいですね!元々惚れてますけど余計に惚れますね!応援してます!更新頑張ってください! (2019年12月22日 1時) (レス) id: f06d85eb8e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ゆずの実さん» ゆずの実様/コメントありがとうございます!どんどん更新して参りますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします! (2019年12月21日 13時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りひと | 作成日時:2019年12月13日 23時

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