きみのとなり ページ19
木々の緑は日に日に濃くなり、講義棟のわきに植わった紫陽花の色も、だんだんと深く鮮やかになっていった。
降り出した雨はある日、そのままやまなくなった。
そうして、関東地方に梅雨入り宣言が出されて1週間ほどたった頃、うらたさんは思い出したようにふらりとうちにやってきた。
「飯、食いに来たわ」
「来るなら前もって言ってくださいよ。突然来て何もなかったらどうしようと思ってたんですか」
「そりゃあ、お前ん家に何にもないなんてことはないと思ったから、考えなかったわ」
そう言って、うらたさんは笑いながら、鞄を漁った。
「そうそう、あとこれ。読んだから返すわ。さんきゅ」
そう言われて差し出されたのは、いくらか前に貸していた小説だった。
「ほんとに読んだんですね」
「お前、俺の事ばかにしてんの？」
「だって、本読まないって言ってたじゃないですか」
「生意気なやつ」
そう言って、うらたさんはふっと笑った。
バイトの子は、うらたさんは優しくて頼りになって笑顔が素敵だと言っていたけれど、それは確かだと思う。
ただ、私に対してはなぜか一言余計だ。
バイト中、他の女の子と話す時は、優しい好青年の振りをしているだけなのかもしれない。
私と話す時は、男友達に接するような、そんな話し方をする。
その一方で、それが、私がうらたさんが話しやすい要因なのかもしれないけど、とも思う。
「あ、これ」
うらたさんが私の本棚を物色して手に取ったのは、またべつの小説だった。
「これ、借りてた作家さんの別の作品じゃん。次、これ借りてもいい？」
「どうぞ」
「さんきゅ」
そういえば私も夕飯を食べていなかったので、ついでにうらたさんのぶんも作りながら、返事をした。
ありあわせですぐに作れるもの、と冷蔵庫の中身を確認して、できるとすぐに検討がついたのはオムライスだった。
卵をボールにわり入れて、牛乳を少し加え、塩コショウで味を整える。
十分にかき混ぜてから、熱したフライパンで仕上げていく。
「へえ、慣れてんのな」
うらたさんはその様子を後ろから見ていた。
「普段キッチンなんだから、うらたさんだってこのくらいできるじゃないですか」
「そうだけどさあ、自分で食うやつってなんかやる気出なくない？あと、俺オムライスは苦手」
ふわとろがうまくできん。とうらたさんは言う。
「それに、俺はAが作ったのが食いたいの」
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りひと(プロフ) - たまさん» たま様/コメントありがとうございます！またコメントをいただけて嬉しいです！続編のほうも、引き続きよろしくお願いいたします！ (2019年12月24日 11時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
たま(プロフ) - こんにちは！グッドイブニング･トウキョウから引き続きずっと読んでいます。坂田さんsideも入れて頂きありがとうございました。これからの逆襲編も楽しみですし、また坂田さんとくっつくのも楽しみにしております。これからも応援しております。 (2019年12月24日 11時) (レス) id: a928baf79e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - shioriさん» shiori様/コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです！今後も楽しんで読んでいただけるよう努めて参りますので、応援のほどよろしくお願いいたします！ (2019年12月22日 3時) (レス) id: 643f7a330d (このIDを非表示/違反報告)
shiori(プロフ) - 初コメ失礼します！浦田さんのキャラめちゃくちゃいいですね！元々惚れてますけど余計に惚れますね！応援してます！更新頑張ってください！ (2019年12月22日 1時) (レス) id: f06d85eb8e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ゆずの実さん» ゆずの実様/コメントありがとうございます！どんどん更新して参りますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします！ (2019年12月21日 13時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2019年12月13日 23時
