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志麻の意図が汲み取れず、彼の顔をじっと見つめる。
すると彼は照れ隠しをするようにぶっきらぼうに言って視線を逸らした。
「…………吸うならこっちにしとき」
「私、メンソール吸ったことないんだけど」
「そんなん知るか。お守りみたいなもんやし」
「お守り？」
「そ、お守り」
志麻はタバコを持った私の手をそっと包み込んだ。きちんと整った色の薄い唇が、やさしい形に笑いをつくる。
「…………ありがと」
久しぶりにできた彼氏からもらう初めてのプレゼントがタバコだというのもおかしな話かもしれない。だが、それを通して志麻が何を言わんとしているのかは分かる。
マルボロがMan Always Remember Love Because Of Romance Onlyの頭文字をとったものだというのも知っていたから、KOOLのも知っていてもおかしくない。
「やっぱり志麻ってキザね」
「そう？」
「だって、」
Keep Only One Loveなんて。
「だって？」
「…………志麻って、私のこと相当好きよね」
「Aもテレパシー使えるん？」
志麻はそういって私の頭を撫でて顔を上げさせると、そのままそっと後頭部を手のひらでおさえてキスをした。
彼が私を好きだと言ったのは、ふたりで泣いた夜だけだ。言わない代わりに、彼はいつもキスやハグでそれを伝えてくる。
照れ隠しなのか積極的なのか、彼の感覚はよく分からないけれど、愛されているという事だけは実感できた。まるで、丸ごと受け入れてくれているような、そんな感覚。
「………志麻、ほんとにありがとね」
志麻にどんな意図があったにせよ、私が彼の言葉に、彼自身に救われたのは事実だった。そのうえ、遠回しではあるけれど愛し抜くという宣言のようなプレゼントまでくれた。
「愛してる」
いつも自分の感情をタイミングよく伝えることはできないけれど、いま分かっていることを彼に伝える。次に伝えるのはいつになるのか分からないけれど、少しでも志麻の心に届きますように。
あなたが私を必要としてくれているように、私もあなたが必要なのだと伝わりますように。
彼がずっと私に、笑いかけてくれますように。
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りひと(プロフ) - みぃさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけて何よりです。がんばりますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年9月21日 22時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 感情移入してしまうくらい本当に面白いです（ ; ; ）更新頑張ってください！楽しみに待っています！ (2020年9月21日 4時) (レス) id: d65a61624a (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - まーかーさん» コメントありがとうございます。がんばります！ (2020年9月12日 12時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
まーかー(プロフ) - 続編おめでとうございます！あぁ...すごい切ない展開...更新がんばってください！ (2020年9月11日 17時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - Quuさん» コメントありがとうございます。マルボロの話はずっとどこかで出したいと思っていたので私も嬉しいです。志麻さんの話はなかなか書く機会に恵まれず、完結している作品がないので、このお話は最後まで書けるよう頑張ります。今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年9月8日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年9月3日 21時
