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少しの隙もなくしたくて、抱きしめる腕を強めた。
私たちはそうしてリビングで抱き合っていた。しばらくして、センラが動こうと身じろぎをした。離れてしまうと思ってしがみつくと、彼は小さく笑う。
「大丈夫やって。いったん座ろ」
センラが離れてしまうのが怖くて首を振る。彼が「しゃあないなあ」とちっとも不満そうでない口調で言った次の瞬間だった。
ふわり、と体が宙に浮いた。
センラの匂いと体温がさっきよりも濃くなる。
ビックリして身を固くすると、すぐ上からセンラがくすくすと笑う声がした。そこでようやく、彼に抱き上げられたのだと頭が理解する。
彼は私を抱いたまま部屋の電気をつけてソファに座った。
「A、ひっつき虫みたいやな」
「だめ？」
センラの頬に指を滑らせてみた。乾燥で少しだけ荒れている。唇も少し硬くなっていて、そこをふにふにと押せば彼は笑ってキスをした。
「まさか。そんな訳ないやろ。俺からしたら役得、役得」
「………ばか」
センラの腕の中は安全地帯だってことを知っているから、私はそこから出られない。出た途端、きっといまの私はひとりでは立てなくてすぐに崩れ落ちてしまうから。
だからこそ、センラがこうやって私の気持ちが楽になるように話をして、思い切り甘やかしてくれる時間が好きだった。
「………A」
「ん？」
顔を上げると、センラの目の奥がぎらりと光ったのが見えた。
「どうしたい？」
「どう、って………」
「Aが望むことなら何でもする、って前に言うたやろ？」
センラがいままでこんなことを聞いてきたことはなかった。いつも何も言わずに、そういう雰囲気を作って始めてくれるから、今日もそうだと思っていた。
だから、どうしたいのか、という質問に答えるのには、少しだけ時間を要した。
考えている合間も、ちらちらと渉さんと奥さんの姿が目に浮かぶ。
ぜんぶ上から塗りつぶして、忘れさせてほしかった。
渉さんのあの穏やかな、幸せそうな笑顔も。
彼の隣を歩く綺麗な女の人の姿も。
そうだ。私は全部、忘れたいんだ。
一時だけでもいいから。目を逸らしたかったのだ。
「忘れさせて、ぜんぶ」
返事の代わりに返ってきたのは、熱をぶつけるようなキスだった。
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あ(プロフ) - 初コメ失礼します。りひとさんの作品がとても大好きで過去作品も全て読ませて頂いております。続編もぜひ読みたいのですが、パスワードをお教えしてもらうことは出来ますでしょうか...？何分仕様が分からず、この場で聞くこと自体間違っていたら申し訳ありません。 (2021年2月10日 1時) (
レス) id: e8d9509923 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - あすかさん» 返信遅れてすみません。コメントありがとうございます。更新頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年12月14日 21時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - 初コメ失礼します！めちゃめちゃ面白くて見る度に評価押しちゃいます(笑)今1番を楽しみにしている作品です！更新頑張ってください(T_T) (2020年11月5日 21時) (レス) id: a6330c149b (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - いずりすさん» ありがとうございます。いつもと違うテイストに挑戦するので私自身もどきどきしています笑お楽しみいただけるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。いずりすさんも体調には気をつけてくださいね。 (2020年10月14日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - Quuさん» ありがとうございます。お楽しみいただけるよう頑張ります。Quuさんもお体に気をつけてくださいね。今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年10月14日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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