Hold me tight【センラ】

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「いまは無理でも、センラならいつかは取れるよ、大賞」


「どうやろうな。大学時代はノリで参加しとったけど、ここに入ったからにはそうもいかへんやん」


「たしかにね。毎年、大賞はうちか丸八建設かって話だもんね。センラみたいに期待されてる設計士は逃げられないか。まあ、頑張りなよ」


「他人事やと思っとるやろ？」


センラが大賞を取りたいと言っている「建築設計デザインコンクール」は文字通り優秀な設計やデザインに対して送られる賞で、それに携わる者なら、いつかは手にしたいと願う、国内最高の賞だ。


私やセンラが勤めている会社からは、これまで何人もの受賞者を輩出している。そして、先程も出てきた「丸八建設」という大手の建築会社からも多くの入賞者が出ており、毎年どちらから大賞受賞者が出るか、それとも第三勢力の台頭かと、業界内で話題になるほどだ。


大賞受賞者を出せば、会社の知名度もあがり、社員の士気も高まることから、会社のバックアップは手厚い。


「俺、今年はベビーベッドも設計したんよ」


「ベビーベッド？なんでまた」


お皿に残っていたサラミを食べながら、センラはぽつりと呟いた。


「まさかベビー用品の設計をするなんて思っとらんかったけど………やっぱ赤ちゃんってかわええな」


視線をあげると、同期の中………いや、社内においても群を抜いて整っている顔があった。年齢問わず、社内の女性たちから絶賛される見た目の良さは、センラ自身自覚しているからか、こうして飲んでいても周囲の視線をかわす術も心得ている。きっと、学生時代からこうだったんだろう。


運ばれてきたおかわりのビールを美味しそうに飲んだセンラは、明るい声で私を見つめた。


「この前、姪っ子が産まれたって言うたやろ？」


「うん。すっごくかわいかった。あれからまた大きくなったんでしょ？」


「そうそう。毎日姉貴から写真が送られてくんねんけど………あった、これこれ。身内びいきって訳やないけど、見てるだけで癒されて、ついついベビーベッドも設計してもうたんよ」


センラは熱っぽくそういうとテーブル越しに体を乗り出した。


「ほら、見てみ？生まれたばっかの頃よりずっとかわええやろ」


スマホの画面を私に向けて、自慢げに言う彼は叔父バカ全開だ。



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