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待ち合わせの15分前。
駅のトイレでメイクを直す。結っていた髪を解いて、ふんわりとした色のルージュを引いた。
渉さんが好きだと言ったものは、ぜんぶ覚えている。彼が好きだ、似合うと言ってくれたものは、ぜんぶ私の特別になるからだ。
渉さんが笑いかけてくれることを想像するだけで、私の胸はいっぱいになる。今日、ずっと楽しみにしていた。渉さんが、私を必要としてくれている。
最後に、彼が好きだと言ってくれたDiorの香水をつけて待ち合わせ場所へと向かった。
待ち合わせ場所に行くと、渉さんはもうそこにいた。
「すみません、お待たせしました」
「いいよ。急に呼び出したりして、ごめん」
「そんな……私、嬉しかったです」
「じゃあ、いこっか」
「はい」
私はいつものように渉さんの一歩後ろを歩く。
裾を掴むこともなく、手をつなぐこともなく、細々と言葉を交わしながら、渉さんは私を導いていく。少し手を伸ばせば届く場所に彼がいるのに、それをすることは許されない。
私たちの関係は、そういう関係だ。
毎回胸が苦しくなる。けれど、私は彼の後ろ姿が好きだった。
しゃんと背筋を伸ばして堂々と歩く姿が好きだ。たまに振り返って、安心したように笑う顔が好きだ。
でもそれと同時に、私なんかが足を引っ張ってはいけない人なんだという事も分かっていた。
ああ、どうしたらいいんだろう。
どうしようもなく、渉さんが好きだ。いけないことだと分かっていたとしても、それでも止められないくらい、彼が好きだ。
彼が連れていってくれたのは、シックなカフェレストランだった。渉さんが連れてきてくれるのは、いつもおしゃれなところばかりで、少し緊張してしまう。
「ここ、パスタが美味いんだって。A、好きだって前に言ってたでしょ」
「覚えててくれたんですか？」
「当然だろ」
飛び跳ねたくなるほど嬉しかった。こんなところでそんな振る舞いは出来ないので、なんとか堪えて渉さんに微笑んでみせる。
「嬉しいです」
「Aの好きなもの、ちゃんと覚えてるから」
得意げにする顔も、かっこいい。
ほら、渉さんがそう言ってくれるから、私はどんどん離れられなくなってしまうのだ。
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あ(プロフ) - 初コメ失礼します。りひとさんの作品がとても大好きで過去作品も全て読ませて頂いております。続編もぜひ読みたいのですが、パスワードをお教えしてもらうことは出来ますでしょうか...？何分仕様が分からず、この場で聞くこと自体間違っていたら申し訳ありません。 (2021年2月10日 1時) (
レス) id: e8d9509923 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - あすかさん» 返信遅れてすみません。コメントありがとうございます。更新頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年12月14日 21時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - 初コメ失礼します！めちゃめちゃ面白くて見る度に評価押しちゃいます(笑)今1番を楽しみにしている作品です！更新頑張ってください(T_T) (2020年11月5日 21時) (レス) id: a6330c149b (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - いずりすさん» ありがとうございます。いつもと違うテイストに挑戦するので私自身もどきどきしています笑お楽しみいただけるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。いずりすさんも体調には気をつけてくださいね。 (2020年10月14日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - Quuさん» ありがとうございます。お楽しみいただけるよう頑張ります。Quuさんもお体に気をつけてくださいね。今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年10月14日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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