Nothing to give ページ6
ルシファーの姿を認めた瞬間、志麻と坂田が駆けていく。
「うおおおっ！！」
2人の雄叫びは、ルシファーの笑いによって遮られた。彼の口調に、怒りはなかった。むしろ、抑えても抑えきれぬ喜びが滲んでいる。
ルシファーは、煮え湯を飲まされた屈辱を晴らす機会を得た喜びに、興奮していた。復讐の念が、戦闘を好む血をいっそう燃え立たせているに違いなかった。
ルシファーは、傍目から見ても異常だった。うらたは、息が詰まるような心地がした。なぜなのか、と自問するまでもない。ルシファーの目の輝きが原因だ。
以前の戦いのときとは、光がまるで違う。あのときも異様な興奮に輝いていたが、いまはほとんど正気を失っているとしか思えない。
志麻と坂田はいちど間合いをとった。
ルシファーは魔法で槍を作り出し、ゆっくりとこちらに歩いてくる。ただ歩いているように見えるが、全身、隙はない。もしいま飛びかかろうものなら、即座に命を落とすだろう。
なにより、うらたでさえ怯ませるその凄まじい殺気が強固な鎧となって、ルシファーを守っていた。
うらたも、できることなら、こういう敵とは当たりたくない。しかし、逃がしてくれる相手でないことも分かっていた。そして、ここで逃げる訳にはいかないことも。
うらたは覚悟を決めた。
それが伝わったのか、センラも同じような顔をしている。
しかし4人の体勢は、傍目から見ると不安になるほどに自然なものだった。こちらからは仕掛けない。必ずルシファーのほうから、攻撃してくるはずだ。防御で始める場合は、自然体で構えるのがいちばんいい。
それは、長年の経験で得た知恵だ。
「捻り潰してくれる」
ルシファーは短く宣言するなり、案の定、鋭い突きを繰り出した。彼の槍は、志麻の刀でがっちりと受け止められた。
ふたりは、しばし組み合ったまま動かない。動けないのだ。
だが、急に志麻が力を抜いた。
すかさずルシファーが首筋を狙う。しかし、刃先が届く寸前に志麻は身を屈め、後ろに飛び退いた。横から、センラの魔法が貫こうとしてくる。読んでいたとみえ、ルシファーもすぐに後方に飛び退いた。
坂田が間髪を入れずに、魔法を突き出した。流されたと思ったら、顔面に槍の刃先が来る。避けて、相手の指を狙う。わずかに魔法が当たったかと思ったが、グローブを裂いただけにとどまった、
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ちょこ - とてもよかったです！その後話がもっと欲しい！ (2022年6月26日 23時) (
レス) @page23 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 気づいたらこのお話に飲まれてました。とても素敵なお話をありがとうございました。他の作品も読みます！(*'▽'*) (2022年6月20日 21時) (レス) @page23 id: 020978a023 (このIDを非表示/違反報告)
ぷ(プロフ) - 読むたびに世界観に飲まれていきました。気付いたら最後まで読んでいました。素敵な世界を覗けてよかったです。ありがとうございました。 (2020年9月10日 20時) (レス) id: 5dd39aece4 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - 水無。さん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたのであれば何よりです。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年9月4日 23時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
水無。(プロフ) - ことで話にのめり込みやすかったですし、特に坂田さんの初々しいしい恋の表現の仕方には毎回きゅんきゅんさせられました。りひとさんの作る作品が大好きです。新作も前の作品も漁ってたくさん読みたいと思います。素晴らしい作品をありがとうございました！ (2020年9月3日 21時) (レス) id: 2fdfcf242b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年8月1日 11時
