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「はい、A。あーん」
調子に乗ったセンラが、炊き込みご飯を箸に乗せてAの口もとに持っていく。困ったようにセンラを見つめると
「ほら、食べて」
と、にこにこと笑いながら言われるだけで、Aは恥ずかしさと困惑で、箸の上の炊き込みご飯とにらめっこをする羽目になってしまった。
しかし、センラはAが食べるまで諦める気はなさそうだ。観念して小さく口を開けようとしたとき、横から手が伸びてきた。手の主は、大きな口を開けて、ばくり、と炊き込みご飯を食べてしまった。
「ちょ、坂田！なにするん」
「んま」
坂田に文句を言うセンラを横目に、当の本人はもぐもぐと炊き込みご飯を咀嚼している。
「坂田さん？」
「なんや坂田？ヤキモチ？」
志麻がからかうようにいうと、彼は顔を赤くしたが、直ぐに肯定の意を見せた。
「そうだったらなんやねん。A、俺にしてよ。あーんって」
坂田はそういうと、餌を待つ鯉みたいに口を開けてみせた。急展開についていけず、頭で考える前に体が動いた。
「えと、あーん？」
「ん。ありがと」
坂田はそう言いながらも飲み込むと、また口を開けてきた。もっと、ということだろうか。まるで幼子のようなおねだりに、Aはくすりと笑みをこぼしてまた口もとに箸を運んでやる。
「坂田ばっかりずるいって！A、俺も！」
「ええやろ？Aと関節ちゅーしたもん」
したり顔をした坂田がセンラをからかう。
関節キスだ。坂田にそう言われた途端、顔が熱くなった。
「俺もAとしたいー！」
まるで高校生のような言い争いをしている中で困って辺りを見回すと、うらたがちょいちょいと手招きをしていた。言い争いに夢中のセンラと坂田は気づかなかったようだったので、そっとそこから離れてうらたのとなりに避難する。
「う、うらたさん。助かりました」
「お前も大変だな」
よしよし、とペットにするみたいにうらたはAの頭を撫でる。
「ほら、ここで食えよ。こっちのほうが落ち着いて食えるだろ？」
「ありがとうございます」
「そういや、これ食った？」
うらたが指したのは、和え物だった。
「まだです」
「これも美味かった。ほら、食ってみ？」
「ありがとうございます」
うらたがあまりにも流れるように食べさせようとするものだから、Aも当然のようにそれを受け入れてしまった。
「あー！！今度はうらさんがAにあーんってしとるやん！」
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ちょこ - とてもよかったです！その後話がもっと欲しい！ (2022年6月26日 23時) (
レス) @page23 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 気づいたらこのお話に飲まれてました。とても素敵なお話をありがとうございました。他の作品も読みます！(*'▽'*) (2022年6月20日 21時) (レス) @page23 id: 020978a023 (このIDを非表示/違反報告)
ぷ(プロフ) - 読むたびに世界観に飲まれていきました。気付いたら最後まで読んでいました。素敵な世界を覗けてよかったです。ありがとうございました。 (2020年9月10日 20時) (レス) id: 5dd39aece4 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - 水無。さん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたのであれば何よりです。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年9月4日 23時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
水無。(プロフ) - ことで話にのめり込みやすかったですし、特に坂田さんの初々しいしい恋の表現の仕方には毎回きゅんきゅんさせられました。りひとさんの作る作品が大好きです。新作も前の作品も漁ってたくさん読みたいと思います。素晴らしい作品をありがとうございました！ (2020年9月3日 21時) (レス) id: 2fdfcf242b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年8月1日 11時
