bittersweet first love ページ16
久々に太陽を浴びた。
下界の、どこまでも深い闇のようなそれとはまた違う、真っ青な海。それがどこまでも続き、向こう側には水平線がくっきりと見える。
どこまでも澄んで美しかった。コバルトブルーからエメラルドグリーンへのグラデーションが、光の具合によってその濃淡を様々に変える。
Aのケガがようやく完治して数日。
彼女の希望で、うらたたちは人間界に来ていた。
「………本当に、これでいいのか？」
「はい。ありがとうございます」
来たのは、海の見える丘の上だった。彼女の前には、簡素な墓がある。先ほど、みんなで埋めたのだ。屋敷の庭先に埋葬していた、彼女の友人を。
「………下界じゃなくて、こっちで眠らせてあげたかったから」
彼女は、海が好きだったから。そう言ったAの横顔はどこか切なく、けれども穏やかだった。
昨晩、もともと予定していた通り、うらたは彼女に選択を求めた。ゴーストシップに残るのか、自分たちに着いてくるか、人間界に戻るか。当然、Aは困惑した顔を見せたものの、しばらくの後にはしっかりと彼らの目を見つめ返し、
「考えさせてください………でも、答えを出す前に一度、人間界に行きたいんです」
そういったのだ。だからうらたたちは、ここにいる。下界へと続くゲートはそらるが開いたままにしてくれている。一度閉じてしまうと、Aが戻って来れなくなるからだ。
「ちゃんと、眠れるとええな」
「ええ。きっと、大丈夫です」
志麻に答えた彼女は、少しだけ笑った。そして、名残惜しそうに人間界の海を眺めてからうらたたちに向き直り、彼らの顔をひとりひとり見渡した。
「ありがとうございました。連れてきてくださって」
「それで、答えは決まったのか？」
「はい」
Aは真っ直ぐうらたたちを見つめた。その顔に、一切の迷いはない。
「…………最初は、下界ってほんとに地獄みたいな場所だと思いました。よく分からない魔物はいるし、殺されそうになるし」
Aは淡々とした口調で語りはじめた。そして、穏やかな笑みをつくり、4人を見遣る。
「だから、絶対こんなとこで死んでたまるかって、絶対に人間界に帰ってやるって思ってました」
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ちょこ - とてもよかったです！その後話がもっと欲しい！ (2022年6月26日 23時) (
レス) @page23 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 気づいたらこのお話に飲まれてました。とても素敵なお話をありがとうございました。他の作品も読みます！(*'▽'*) (2022年6月20日 21時) (レス) @page23 id: 020978a023 (このIDを非表示/違反報告)
ぷ(プロフ) - 読むたびに世界観に飲まれていきました。気付いたら最後まで読んでいました。素敵な世界を覗けてよかったです。ありがとうございました。 (2020年9月10日 20時) (レス) id: 5dd39aece4 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - 水無。さん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたのであれば何よりです。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年9月4日 23時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
水無。(プロフ) - ことで話にのめり込みやすかったですし、特に坂田さんの初々しいしい恋の表現の仕方には毎回きゅんきゅんさせられました。りひとさんの作る作品が大好きです。新作も前の作品も漁ってたくさん読みたいと思います。素晴らしい作品をありがとうございました！ (2020年9月3日 21時) (レス) id: 2fdfcf242b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年8月1日 11時
