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衝撃音がして、一気に肺に酸素が入ってくる。
「ごほっ、げほっ、……っ、」
「センラ！大丈夫か！？」
「志麻くん………」
志麻は崩れ落ちたセンラを支えて立たせた。センラが「ごめん」というと、今度はセンラの頭にゲンコツが降ってくる。
「っだ！！」
「ほんま、なに悪夢に呑まれてんねん！死ぬとこやったぞ、お前！」
「え………」
状況が飲み込めないセンラに、志麻が顎をしゃくった。
「あれ見ろ」
志麻の視線の先には、魔物がうずくまっている。おそらく、先程の衝撃音は、志麻があの魔物を殴り飛ばした音だったのだろう。
顔は確かにナナだ。けれど胴体は、
「クモ………」
「あいつがナイトメア本体やな。この空間中、クモの巣だらけやし」
志麻の言う通り、この部屋はいままで見てきたどこよりも蜘蛛の糸が張り巡らされ、複雑に絡み合っていた。自分は、ナナの夢を見せられていたのだ。
「センラ、いけるか？」
「当然やろ。こいつほんま趣味の悪いやつやな」
バカバカしすぎて、笑いが込み上げてくる。こんな夢に揺さぶられる自分もどうかしてた。ほんとうに、寝覚めの悪い夢だった。
「禁忌の子はもうすぐ私のものになる。もう手遅れよ」
体制を立て直したクモがニタニタと笑った。けれど、きっとAのことはうらたと坂田が助けているはずだ。センラにはもう、迷いはなかった。
「マジでそう思ってるん？」
志麻が挑発するように言った。志麻も同じだ。うらたと坂田を信じているのだ。
蜘蛛の魔物はニタニタと気味の悪い笑顔を崩さなかった。
「でもお前は、彼女を殺せないでしょう？」
そういうと、魔物はまたナナになる。センラは一瞬動きをとめた。それを見たナナが、センラめがけて襲いかかってくる。
今度こそセンラは動いた。迷うことなく間合いを詰め、左手を魔物の胸元にあてる。そして、いちばん破壊力のある魔法を放った。
魔物の胸元に風穴があき、反動でナナの身体が後ろにとんでいく。
「舐めんじゃねえよ、って感じやわ」
「…………センラ」
「ごめんなぁ、志麻くん。美味しいとこだけもらってもうたわ」
「ええよ、別に」
蜘蛛の糸が溶けてなくなり、血塗られた壁も元通りになっていく。普通の世界。まるで日が昇っていくような白さを取り戻していく世界に、ふたりはほっと息をついた。
とうとう、この夢も終わるのだ。
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りひと(プロフ) - 凍華＠ラさん» コメントありがとうございます。みなさまの応援のおかげで、ありがたいことにランキングに載ることができました。今後ともお楽しみいただけるよう更新してまいります。引き続きよろしくお願いいたします。 (2020年5月29日 19時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
凍華＠ラ(プロフ) - よくランキングに載っている作品だったので、少し気になって読ませていただきました。本当に面白くて、一気読みしてしまいました。続きが楽しみです。無理のない範囲での更新、頑張ってください！ (2020年5月29日 12時) (レス) id: 960374666f (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - over the rainさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたこと嬉しく思います。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年5月26日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 続編おめでとうございます。題名に惹かれ読み始めてこらあっという間に3作品目でびっくりです。応援してます。 (2020年5月26日 6時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ありまさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しく思います。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。 (2020年5月25日 18時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年5月24日 23時
