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仕事を終えた帰り道、センラとAはスーパーに寄ってから帰路についた。
今日は1日晴れていたからか、空気はいつもより澄んでいて冷たい。
いつもの坂道を登ると、Aが住んでいたアパートが見えてくる。
今日は珍しく、その前に人影が見えた。
このアパートの住人だろうか、いや、それにしてはおかしい。
その男は、アパートに入るわけでもなく、ただじっと、2階の部屋を見つめている。
誰かを待っているのだろうか？
「あっ、」といって立ち止まったAを見ると、彼女はかたかたと震え出した。
視線は、真っ直ぐ前を見ていて、瞳は恐怖に染っていた。
センラは彼女の視線の先を追うと、先程の男がこちらを見ている。
男はゆらゆらとこちらに向かってきたのを見て、センラはこいつはAを待っていたのか、と考えた。
そうすると、考えつく結論はひとつだ。
この男はミカミなのではないか。
そこまで思考がいって、センラは彼女をかばうように1歩前に出た。
彼女が震えているのが背中越しにわかり、センラは彼女の手を握った。
大丈夫。俺がおるから。
言外にそう伝えて、彼は男を見る。
男の顔は街頭に照らされていて、顔は不機嫌そうに歪められているのがわかった。
「A。迎えに来たよ。僕と行こう」
おもむろに男は言った。
ああ、やはりこいつはミカミなのだとセンラは確信した。
ミカミは眼鏡をかけた青年で、流行りのツーブロで、片方は髪を耳にかけている。
身長は170ないくらいだろうか。
良くも悪くも平均的といった印象だ。
それを大きく覆すのが、彼の持った雰囲気だった。
一重で切れ目の瞳は狂気的で、どこか近寄りがたさを纏っていた。
「どなたですか？彼女、怯えとるんやけど」
いつもより低めの声でセンラが威嚇するように唸った。
「A、こいつだれ？」
君は僕のものだって自覚が足りないのかな？と男は無邪気に首を傾げた。
Aはびくりと肩を揺らし、センラの手を握る力が強くなる。
「俺はAの彼氏だけど。手、繋いでんの見えんの？」
これ以上Aに手出すなら警察に電話するで？とセンラはAと繋いだ手をミカミに見せつけるように言う。
ミカミは見るみるうちに顔が憤怒の色に染まるが、すぐに何かに気づいたように笑みを浮かべた。
「そっか、Aはそいつに騙されてるんだね。可哀想に。僕が助けてあげるからね」
待っててね。と言い残して男は2人に背を向けて走り去っていった。
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作者名：りひと
| 作成日時：2019年11月3日 23時
