グットモーニング・トウキョウ【センラ】 (ページ26)

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Aが目を覚ますと、志麻はまたちょっとだけ涙を流しながら彼女を思い切り抱きしめた。

いたいよ、志麻さん、なんて彼女はうっすら笑っている。

「ほんま、無事でよかった」

志麻はようやく彼女を解放すると、いつものように少し乱暴に頭を撫でた。

電話来た時、ほんまに心臓止まるかと思ったわ!!
冗談めかして言っているが、これはおそらく本音だろう。

「…でも、お前が電話くれて、ほんとによかったよ」

「…何かあったら電話しろって、志麻さんが言ったから」

「…言っとかんかったら、お前また1人でどうにかしようとするやろ」

全部お見通しだ、とでも言うように志麻は言った。

まるで本物の兄妹のようなやり取りに、センラは敵わないなと思った。

彼女への「好き」を認識したのはつい最近だ。

種類は違えど志麻の方が彼女への「好き」はまだまだ強いだろうし、付き合いも長いから彼女のことをよく知っている。

そう思うと、悔しいと思う反面やっぱり志麻くんはすごいなとも思ってしまう。

自分ももう少し早く彼女との距離を縮められていたらと、ちょっとだけ後悔した。

「ほら、お昼にしましょ。Aちゃん、食べれそう？」

たまご粥とオムライス、どっちがいい？と聞くと小さな声でオムライス、と返ってくる。

「りょうかい」

着替えたら、ご飯にしよう。

そう言って、志麻とセンラはいったん部屋を出た。
扉を閉めるとすぐに衣擦れの音が聞こえてきた。

彼女が着替えている音だ。

センラはその間にオムライスをレンジに入れ、小鍋に入っていた粥を火にかけた。

レンジがなった頃、扉の向こう側から、着替えましたと声がかかる。

ゆっくりと扉を開けたAの顔色は幾分かマシになったが、まだ青白い。

志麻は、Aに座るように促し、自分もいつもの席に腰掛けた。

ローテーブルに3つの皿とケチャップが静かに置かれる。

志麻は黙ってスプーンを手に取ってオムライスを食べ始めた。

「Aちゃんも、たべてな。食べんと、元気も出んよ？」

センラはなかなかスプーンを取ろうとしないAにゆっくりと促す。

そんな彼女に次に声をかけたのは志麻だった。

「A」

彼は彼女の名前を呼ぶと、彼女の口にオムライスをのせたスプーンを突っ込んだ。

「んぐっ、」

彼女は突然入ってきたオムライスに驚きながらもそれをゆっくりと咀嚼した。

「うまいやろ」

彼女はこくこくと頷きながら、また涙をポロポロとこぼした。