グットモーニング・トウキョウ【センラ】 (ページ19)

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手紙の一件から数日が経過していた。

その後、彼女の様子に変化はなく、あの手紙は一体なんだったんだろうと、センラは頭の片隅で考えていた。

…志麻くんに聞けばなにか分かるのだろうか。

と一瞬よぎるも、自分が言う前に彼女が志麻くんに相談するだろうと結論づけて、思考を追い払う。

今日は、珍しく外で食べようと言う話になっていたので、定時に上がれるように仕事をこなしていく。

Aとあのアパート以外で夕食を共にするのは初めてのことだ。

行こうと話にのぼったのは、センラが前から気になっていたという居酒屋だ。

それは、Aたちの最寄り駅からすぐの大通りに面した雑居ビルの2階にあった。

自動ドアが開くと、いらっしゃいませぇー！と店員の元気な声が聞こえた。
店内はセンラたちと同じように背広を着たサラリーマンでごった返している。

だいたいは働き盛りのサラリーマンだったが、ちらほらと女性客のグループも見受けられた。

何名様ですかー？お席ご案内いたします！
と店員のお決まりのセリフに答えて、案内された席につく。

4人用のボックス席に向かい合うようにして座ると、真ん中には網が張ってあった。

「ここ、ホルモンが美味いらしいねん」

席につくと、センラはにっこりと笑った。
彼は、何食べたい？とメニューを開くと、Aに見せた。

ぱっと広げられる色とりどりの料理の写真。
中には見たことのない名前の料理もあって、Aは困惑した。

「…えっと、」

困った顔をしたAを見て、センラは俺はこれとこれが結構好きだけど、食べたことある？と聞く。

彼女がふるふると首を振ると、ちょうど店員がお通しを持ってきた。

「生とレモンサワー、それからこれとこれと、これ。ひとつずつ。」

センラは自分と彼女の飲み物と、彼女が食べたことがないと言ったメニューを頼んだ。

Aがビールが苦手なのを知ったのは、年末だった。

志麻くんと3人でいつものごとく夕飯を食べていると、彼女がいつも飲んでいたレモンサワーが切れてしまっていた。

ビールはまだあったので、それを勧めると

「ビールは、苦手で」

と俯きがちに言った。

Aが自分の好き嫌いや意志を伝えることを見たことがなかったので、センラは衝撃を受けた。

志麻くんは知っていたようで、そういえばそうやったなぁと笑っていた。