グットモーニング・トウキョウ【センラ】 (ページ16)

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未だに夢の世界にいる志麻くんをたたき起こし、Aの作った朝食を食べた。

ご飯に卵焼き、キャベツの味噌汁、焼き鮭という和朝食の定番が並んだ。
彼女は和食が好みらしい、と頭の中の情報リストに上書きしながら、味噌汁をすする。

テレビでは天気予報のお姉さんが今日も晴れであると知らせていた。

彼女に礼を言い、家を出る。
志麻は何かあったらすぐに連絡するようになどと言っていた。
何かあってからじゃ遅いんだから、と念を押すように言って、ようやく部屋を出た。

もうすっかり日は高くなっていた。

センラの家までは2軒先と近い距離にあったが、特に会話もなくいつもよりも遠く感じた。

なんとか会話を絞り出そうと、考えていたときだった

「あいつのこと、見てやってな」

「佐藤さんのこと？」

「そ」

あいつも色々あるからさ、と困ったように志麻くんは笑った。

「いろいろって？」

「いろいろは、いろいろだよ」

「ふぅん。まあ、一応部下やし。面倒は見てるつもりやけどね」

センラは秘密を共有してもらえなくて、仲間外れにされたような気持ちになった。
もういい大人なのだし、誰しも言いたくないことのひとつやふたつはあるものだ。

「あいつ、会社ではどうなん？」

「仕事はできるんやけどねえ…」

やっぱりか、と志麻くんは言った。

「あいつ自分のこと言わへんからなぁ」

表情も分かりやすく変わらんし。と後付けした。
そう言って心配する表情は、兄そのものだった。

「せやなぁ。たしかに、自分の考え言ってるのは見たことないなぁ。基本、メリットデメリットで判断しとるし。本心話してもらえてない感はあるかも」

「それはセンラがちゃんと向き合えば解決するやつやん！」

俺も最初そうやったもん、と言う。

「そうなんかなぁ」

と言いながら、センラは向き合ってるつもりではあるんやけどなぁと心の中で独りごちた。

あと2週間で、クリスマスだ。