＊55 M.Side ページ25
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出ようか出まいか少し躊躇った。
けど、俺ら怪しいことなんて何にもないもんね。
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阿 「あ、もしもし。俺だけど…」
宮 「もしもし」
阿 「？」
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通話をオンにしてみると、携帯の向こうから爽やかな阿部の声が耳に入る。
もう日付も変わってるっていうのに仕事の話とか、なのか…？
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阿 「えっとぉ…舘、さん？」
宮 「うん。その舘さん」
やっぱりそりゃあ驚くよなぁ。
Aちゃんの携帯なのにいきなり俺が出たら。
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阿 「Aいや…Aちゃんは？」
宮 「話すと少し長くなるんだけど…」
阿 「う、ん」
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阿部に全部話した。
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朝から顔色が悪く、それを心配して彼女を着いて来てみたら、案の定ロビーでぶっ倒れてしまった。
彼女の家も分からない上に
このまま一人にするのはとてもじゃないけど心配なので、自分の家まで連れて来た、ということを…
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阿 「で、今は寝ているの？」
宮 「…うん。薬飲んで、今は眠ってる。大分顔色も良くなったし、熱も下がったから心配はいらないよ」
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って、別に…
阿部にここまで詳細話さなくてもよかったか。
倒れちゃったから俺の家に連れて来た。くらいでも。
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阿 「…そっかぁ…」
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阿部が一瞬黙り込む。
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阿 「今はふたりきりなんだよね…？」
宮 「えっ、うん。でも別に何もないよ。笑」
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阿部の声が少し焦っているような、震えているようなそんな気がした。
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宮 「つかさ、阿部…なんでAちゃんの連絡先…」
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阿 「あっ、あぁ〜…彼女が入社して間も無くして交換したの。仕事で分からないところとかも補えるから、いつでも聞いてって」
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宮 「そうだったんだ…」
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どうしてか、少し心が沈む。
それは、阿部とAちゃんが俺の知らないところで繋がっていたという事実に…
変だなぁ、俺。なんか可笑しいぞ…
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阿 「舘さん…」
宮 「んっ？」
阿 「Aちゃんのことよろしくね」
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阿 「変な意味はないよ？ただあの子、無理しすぎるところがあるから。
俺も明日にはそっち帰るけど…」
宮 「お、おう。あと数日だけど阿部も頑張れよ！」
阿 「うん。ありがとう」
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そのまま、通話は途切れた。
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ただの直感。
けど、この二人は何かある。何かを隠している。
そう思った。
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作者名：くろーばー。
| 作成日時：2020年12月29日 22時
