8* 愚痴りに来たなら惚気けるな ページ8
「……帰るか」
また、少し浦田を門の前で待っていた。また待っている自分が嫌だ。自分が浦田を求めているような気がして、認めたくなくて、仲直りしてやりたくて。だけど、やはりあいつは少し言いすぎだ。相手から謝ってくれたらいいのに…なんて二人とも思っている事だろう。
下り坂を降りているとペダルを漕ぐ音が聞こえてきて不意に振り返るとイヤホンを付けて坂を下る浦田だった。思わず足が立ちどまり―――いや、動かなくなったの方が近いのか。見とれて風になびく前髪を少し気にしながら下ってくる。
「…あ、いたんだ」
「うん」
キュッと音がして自転車を足で止めた。そのままイヤホンを外しつつ私に話しかけた。久々に話せた気がして期待感を抱く。だがそのあとに続く会話がなく息が詰まる。夕焼け空に照らされて世界はほんのり柚子色に染まっていた。
「あのさ」
「…なに?」
「少し愚痴らせて。最近Aに愚痴れてねぇから」
私がぽかんとした顔で唖然としているとムスッとした顔をして自転車のサドルで足を絡ませて遊びながら喋り始めた。
「坂田あいつA取ろうとか思ってんじゃねぇよな?…まじでないわ。馬鹿なのかな?俺の奴だってずっと言ってんのに聞いてねぇしアホだし何よりまーしぃに影響受けてイラつく発言するし何あれ」
「は、はぁ…?」
小学生か。と突っ込みたくなるようないじけた嫉妬に呆れてしまう。それと同時に顔が真っ赤になり、言葉という言葉が耳に上手く入ってこない。さっきの雰囲気をざっと切り裂くようにべらべらと喋る浦田に反応が返せない。
「ぁ、あの、…うら」
「なぁ」
また私の言葉を遮って真っ直ぐ私の目を見た。ビクッと肩が跳ねて、じっと私も浦田の工メラルドの宝石のような瞳を見つめた。
「坂田と、なんか、こう、付き合ってるーとかねぇよな」
「へ?」
思わず勢いでブンブンと首を横に振った。浦田は安堵の胸を撫で下ろすように大きく息をついた。そしてヘラりと笑ってやっといつもの浦田に戻ったような声で喋り始めた。
「お前さ、俺とよく喧嘩すんじゃん?お前、めっちゃ可愛いじゃん。ほら、ストロー口の飲み方とか可愛いし、怒った時に無意識なのか知らねぇけど口膨らますのとか……坂田と、ほら、同じクラスだしなんか、心配した」
「…うらた」
「でも許したとは言ってねぇから…じゃあな」
最後の言葉も綺麗に遮られて声をかけられぬまま坂道を下って行った。
9* 仲直り後は超素直なのに→←7* 謝り方シュミレーション
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Leaf(プロフ) - あ、はぁ………尊い。 (2018年10月8日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
結月(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します!陰ながらずっと読んでおりました!凄く大好きな作品です^^*作者様のうらたさんのとても好きなので、また読める機会があれば嬉しいです。完結、おめでとうございます。 (2018年10月7日 11時) (レス) id: 286dc51d91 (このIDを非表示/違反報告)
めめ(プロフ) - maiさん» コメントありがとうございます。坂田さんの出番を少し増やしてみますね^^* (2018年9月28日 22時) (レス) id: b10484d3c8 (このIDを非表示/違反報告)
mai - ほんっとうにこの作品好きです!私は坂田家ですが、うらさんも好きなので楽しんで読んでます。坂田が出てくるとにやにやしてたり笑 (2018年9月24日 10時) (レス) id: 77b863b750 (このIDを非表示/違反報告)
めめ(プロフ) - 宮本 ?さん» コメントありがとうございます。世界中のこたぬき様へのプレゼントみたいな短編小説になればと思います〜! (2018年9月15日 23時) (レス) id: b10484d3c8 (このIDを非表示/違反報告)
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