14*仲直りの魔法 ページ14
ふわふわのパンに切れ目が入っており中には少量の野菜とたっぷりのソースに絡められた麺。あとは少し苦手な生姜と後で鏡見なきゃ困る青のり。全部合わせて大好きだけど時々好きだからこそ嫌いになる。
浦田、みたいだ。
「…やっぱ美味いな、焼きそばパン」
「でしょ」
コンビニから出ると私の心の様子を表すかのように雲から光が差し込み、雨はあがっていた。水たまりは光を反射させてキラキラと光っている。ぴちゃ、と音を出して水たまりを軽くふむと鏡みたいにハッキリ映っていた町の景色がぐにゃりと歪む。
「あのさ、ひとつ約束してくんない?」
「何」
「……の、…出さないこと」
いつも以上に情けなくボソボソと喋る彼に一生懸命耳を傾けたが生憎大事なところだけ聞き逃す。畜生。険しい顔して彼を見つめていたら目をまん丸にしてかぁっと顔を赤くした。
「…なんて?」
「いや、あの、…他の男の、名前、出すなー…って」
「へ?」
浦田はあせあせと頭の裏をポリポリとかいたり目をキョロキョロさせたりして気を紛らわす。その発言で私はハッと息を呑んだ。
『私とそんなに身長変わんないもんね〜?あーあ、もっと高身長な彼氏がよかった。センラくんとか…坂田くんとか――――』
一気に冷や汗か垂れ流しになり、今日の原因は私だったことに気付かされた瞬間だった。それなのに私は…びしょびしょの床に私の雨が零れそうになる。でも、泣いたらまた浦田は謝るんだろう。泣かないようにぐっと堪えて
「分かった…ごめんね」
「マジでさ、ほんとにモヤモヤしたんだし。…坂田と…出来てんのかと思ったし……何より他の男の前で泣いて慰めるとか絶対絶対俺がやることだろ?!」
ずかずかと近付いて怒る浦田にごめんなさいしか出てこなくて捨てられた子猫みたいにびくびく縮こまりながら下がってゆく。しまいには鼻と鼻がつんと当たってしまう距離までやってきた。浦田の優しい香り、さらと顔にかかる当たる彼の短い髪の毛。
こいつに他のやつが触れてたって思うと
こいつが私以外の女子と喋ってたって思うと
こいつが、もう私以外と喧嘩したとか聞いたら
(…耐えられない……)
その瞬間に唇にあたたかい感触が触れた。ふわふわで甘くて唇から全身がとろけてしまいそう。唇から離れたかと思うとまた口付けを交わす。ラムネがほろほろ零れて深海に眠ってゆくみたいに。
「――…一生、オレノモノって誓って。」
ケンカップルに、ご注意を。
❦ℯꫛᎴ❧
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Leaf(プロフ) - あ、はぁ………尊い。 (2018年10月8日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
結月(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します!陰ながらずっと読んでおりました!凄く大好きな作品です^^*作者様のうらたさんのとても好きなので、また読める機会があれば嬉しいです。完結、おめでとうございます。 (2018年10月7日 11時) (レス) id: 286dc51d91 (このIDを非表示/違反報告)
めめ(プロフ) - maiさん» コメントありがとうございます。坂田さんの出番を少し増やしてみますね^^* (2018年9月28日 22時) (レス) id: b10484d3c8 (このIDを非表示/違反報告)
mai - ほんっとうにこの作品好きです!私は坂田家ですが、うらさんも好きなので楽しんで読んでます。坂田が出てくるとにやにやしてたり笑 (2018年9月24日 10時) (レス) id: 77b863b750 (このIDを非表示/違反報告)
めめ(プロフ) - 宮本 ?さん» コメントありがとうございます。世界中のこたぬき様へのプレゼントみたいな短編小説になればと思います〜! (2018年9月15日 23時) (レス) id: b10484d3c8 (このIDを非表示/違反報告)
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