ドッペルゲンガーの仕組み ページ9
ベッドで寝てる時に、隣に人がいるのは初めてだ。僕と同じ温もりで、僕と同じ肌。僕と同じ目を閉じて、僕と同じ髪を揺らす。
｢…ねぇ｣
｢…なぁに｣
声をかければ僕と同じ声が返ってくる。薄暗い部屋で、母さんに変な目で見られないように、小声で話しかける。
｢…君は、元々何だったの？｣
純粋に気になった。ドッペルゲンガーの仕組みが。
僕と全く同じ細胞なのか？この体はどこにあるの？…それは、どう消えるの？どうやって同じものを作るの？…たくさん頭に湧いてくる質問。
だけど僕の質問で、彼はピクっと体をふるわせた。いつもの笑みが見えなくて、彼は寝返りを打って僕の方を見た。僕も彼に顔を見せる。彼はシーツをぎゅっと握りしめ、一言。
｢＿＿＿魂の、余り物｣
見たことないほどに苦しそうな表情に、僕は質問したのを間違えた、とさえ思った。
｢…｣
｢人間の身体の数と、中身…所謂魂の数が少々ズレちゃっているんだ。魂の数の方が少し多くてね。｣
｢…じゃあこの体は何？｣
｢君の命、半分今借りている状態なんだ。しばらく時間が経てば形を戻さなければならないから、また別の人のドッペルゲンガーとして生きなければならない。｣
｢戻さなかったら？｣
｢…さぁ｣
あ、はぐらかした。僕はムッと眉に皺を寄せた。だけど、聞いてはいけないような気がして、僕はキュッと口を結んだ。
いろんな人の身体を半分借りてギリギリで今まで生きていたのだろう。しんどいこと沢山あったのだろう。
｢あ、もしかして、おじさんのドッペルゲンガーになったり、可愛い女の子のドッペルゲンガーになったり…｣
｢んもー、現実そんなに甘くないって。…魂にも大きさがあって、俺と同じ年齢、性別の人じゃないとドッペルゲンガーにはなれない。｣
｢じゃあ今、普通に生きていたんなら僕と同じ歳で同じ性別？｣
｢…そゆことだね｣
この質問にも、彼は少し怒った様子で答えた。今まで想像を絶する人生＿＿魂だけの存在なら人生というのか？＿＿を送ってきたのなら、僕の半分をしている間だけでも、人生を楽しんで貰えたらな、なんて。
｢……僕も返して欲しいよ、自分の体｣
｢え？｣
｢ううん、なんでもない｣
彼はそう言って困ったように笑った。僕は、笑い返して、聞き直すのは辞めておいた。
＊
続く
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作者名：しょうゆのすけ | 作成日時：2019年2月26日 15時
