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｢……だ、れ｣
｢あっはは！誰って…見ての通りだよ！ほらほら！｣
そう言って彼は自分をクイクイと指さした。
…あぁ、僕か。って、そんな冗談言っている場合か！僕は何も答えずに目を擦ったり、目を細めたり、近付いたり離れたりしてみた。彼は僕と同じようにふわりと微笑んで、疑う僕を見つめている。
｢………僕？｣
｢正解です。僕です。僕は僕です｣
｢ちょっと待って、ややこしいよ｣
｢君も僕です。僕は君の僕です｣
僕は訳が分からなくて、大きく目を見開いたまま、彼を呆然と見つめた。彼はニコニコと笑って、僕の隣で長ベンチに腰掛けたまま、ブラブラと足を揺らした。
｢…もう1人僕が居たらなぁ、って言ったことありません？｣
｢……そ、そりゃあ、いれば随分楽だし…願ってみたりはした事あるけど…｣
｢それを叶えに来ました。僕は呼ばれた側ですよ？｣
｢よ、呼んだ覚えはないよ！！｣
僕が否定すると彼はムスッとした表情を見せた。が、直ぐに僕を見て『ま！いっか！』と気持ちを切り替える。確かに僕にそっくりだけど、ちょっとポジティブ過ぎないかなぁ…。僕は床に目を落とした。
｢じゃあ、本題に入るね｣
｢ほ、本題…？｣
もう一度彼に目をやった。彼はずいっと僕に顔を近づけた。僕は首を竦めて彼から身を離す。彼はまた自分を指さしている。
｢ほら、僕、分身だよ？自由にこき使ってよ｣
｢…ぇ、僕が？｣
｢君が｣
｢…君を？｣
｢僕を｣
僕は自分を指さして、相手を指さした。彼は相手を指さしてから、自分を指さした。僕は指さした手をゆっくり下ろして、チラチラと彼を見つめて、一言落とした。
｢…なんでも？｣
｢なんでも。｣
彼は頷いた。僕は彼の手首を掴んでみた。ちゃんと、僕だ。肉の質感も、香りも、髪も、グレーの制服も、全部ニセモノじゃない。
｢…そう、なんでも。…内気な君の救いだよ｣
彼は僕の掴んでいた手からするりと逃げて立ち上がった。そして僕の前に立ち同じような手を差し伸べて、僕の顔で僕じゃない笑みを見せた。
｢…じゃあ、作戦会議しようよ、まふまふくん？｣
僕は、弁当の箸をコンクリートの、床に落とし、その差し伸べられた手の上にそっと自分の手を重ねた。
僕という名のドッペルゲンガーは少し首を傾けてにっこり笑った。が、僕の手を握り返した瞬間、フッと笑顔を消したのだった。
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作者名：しょうゆのすけ | 作成日時：2019年2月26日 15時
