健全なあなた達へ【YouTuber短編集】

子供じゃない03 ページ11

「…え？なに？あたしに襲いかかってどうするん。そんな事しても可愛いだけで」

「可愛いで誤魔化すなや」

目にかかりそうなほど降り注ぐ青が鬱陶しい。低い声色に唇を噛んだあたしはいっくんを睨んだ。彼も同じようにあたしを睨みつける。

「はよどいて」

「嫌じゃ」

「自分何してんのか分かってんの」

「じゃあどかしてみ」

彼の真剣な目があたしを貫く。途端に今にも折れるんじゃないかと思うぐらいの強い力で両の手首を捕まれ、床に固定された手はピクリともしない。骨が軋む程のこの腕力、確実に男のものだ。あたしの動揺を感じ取ったのか、青色の髪の毛があたしを見下ろした。

「分かるやろ？俺も男やねん」

あたしの上に跨った彼の眼は本気で、徐々に近づいて来る青色に目がチカチカした。大好きな香水の香りが鼻を掠め、吐いた息が肌に触れる程の距離になる。キスされる。そう思った瞬間、あたしは大きく息を吸い込んだ。そして。

「いやーーっ！！田中ーーー！！！」

喉の奥から声を出して叫べば、あたしを押し倒したいっくんがその声量に目を丸くする。「どうしたん！？」なんて凄い勢いで田中さんがトイレから飛び出してきて、あたしはズボンを下ろしたままの彼にまたもや悲鳴を上げた。

「キャーーーー！！！」

「おい！アホか！どんな格好で出てきとんねん！」

田中さんの格好に思わずツッコミを入れるいっくんだが、田中さんも負けてない。

「お前こそなに押し倒してんねん！」

「もー！ええからはよズボンあげて！そんでもって退いて！！！」

各自みんなで叫び合い。とりあえず田中さんはズボンを上げて、いっくんはあたしから退いて、あたしは起き上がる。床に散らばったプリンの残骸と、手首を赤くしたあたしに目をやったいっくん。

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