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犬、待ち人来ず ページ13

晴れた空の下、あたしは中庭のベンチに座っていた。りょうから教室に迎えに行くと言われたが、5分…10分と待っていても彼が来なかったので自分で中庭に来たのだ。でも二人で食べることに前向きな訳ではないからか、自ら彼を迎えに行くことはしなかった。

「…………」

テスト終わりの解放感を味わうかのように、広い中庭には沢山の生徒が集まっていた。みんな楽しそうに笑っている中に、不安な顔をしているあたしが水の中に垂らされた黒の絵の具みたいにぽつんと居る。

先に中庭いるよ

ここに来る前にりょうへ送ったラインを確認したけど、返信どころか既読すら付いていない。追いかけてラインをする程の内容でも無いしと躊躇う。

「時間無くなるし、もう食べちゃおうかな」

独り言をぼやいて自分への罪悪感を薄めつつお弁当箱を開いた。だけれども微かに残るモヤモヤのせいで手をつける気にならない。
そして中庭から見える反対の校舎の方を眺める。2階の渡り廊下を数人の生徒が行き交い、彼等は色んな速さで止まったり突っ切ったりと忙しない様子だ。
そんな2階の渡り廊下がこの学校の中で校門の次に人が行き交う場所だと思う。体育館や理科室に行くときも使うし、普通科から別のクラスに移動するのにも渡り廊下を通る。まるで架け橋のような役目をしている廊下だが、そこを早歩きで駆けて通る一人の男子生徒をあたしは目で追った。
あの歩き方、てつやだ。見つけた途端に彼の名前を呼ぼうか迷ったけど、そうするには距離があるし中庭から校舎に向けて大きな声を出すのは恥ずかしい……と考えていた瞬間、不意に彼がこちらを振り向いた。変なオーラでも感じ取ったのだろうか。

「あ」

二つの液体が混ざるように視線が合う。あたしはもはや反射的に彼に向けて手を振っていた。こちらに気付いたてつやもひらひらと振り返す。

「売店行ってたのかな」

振り上げた彼の右手に白い袋がある事で推測をする。校舎の中に消えたと思えば、彼はその白い袋を持ったまま下足からスリッパのまま飛び出てきた。不思議そうな顔でこちらに近づいてきた彼は、一人でベンチに座るあたしの状況を理解したのか尋ねてくる。

「りょうは?」

てつやと目線を合わせたあたしは頭を左右に振った。

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作品ジャンル:恋愛
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あおい(プロフ) - 一気見してしまいました!続きが気になります…! (7月29日 19時) (レス) id: 5d8097aa88 (このIDを非表示/違反報告)
こなん - 1番好きな雰囲気のストーリー!続きも楽しみに待ってます!頑張ってください!! (2022年10月20日 15時) (レス) @page14 id: d5939a1a6f (このIDを非表示/違反報告)
あむ(プロフ) - 面白くて切なくて最高です!続き楽しみに待ってます!頑張ってください^_^ (2022年8月15日 15時) (レス) @page14 id: 85ad4508c6 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - くぅかなさん» コメントありがとうございます!そう言っていただきとても嬉しいです。甘酸っぱい学園青春ストーリー!…みたいなのを考えていましたが、昼ドラのような雰囲気になりそうな気配を見せていますね。これからどうなるのか最後まで見守っていただければと思います! (2022年7月7日 9時) (レス) id: c0fa65fbb4 (このIDを非表示/違反報告)
くぅかな(プロフ) - やばい!一気読みしてしまった!続き待ってます! (2022年7月3日 9時) (レス) id: c4e0c26ecd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:匿名 | 作成日時:2022年4月16日 11時

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