20.裸足と純粋無垢 ページ20
突然、玄関の扉が開いた。玄関ホールにしゃがんでいたあたしは、つられるように視線を上にあげる。戸の隙間から朝日が差し込み、彼の金色がまばゆく輝いた。開けたままの扉から、冷えた風と共に流れ込んできたニコチンの苦い香りが
「あれ、起きてたの」
驚いたように彼を見た渡邊さんに”朝日が綺麗だったから”と、何とも顔に似合わない言葉を返した彼は無表情のままあたしを見下ろした。
「帰んの」
唐突にそう尋ねられ、目を細めたあたしは口を紡いだまま深く頷く。
「そう」
小さく呟いた彼の、何かを言いたげな鋭い瞳があたしを射る。だが流すようにあたしはそれを逸らした。お世話になりましたと頭を下げれば「裸足で帰んの」と彼があたしの足元を見る。
「……………」
そういえばそうだった、裸足で飛び出したから靴を持ってきていないのだ。
少しばかり悩んだあたし。だけどそんなのは余りにも想定内で、最終手段には何でも良いからこの家から履物を借りようと思っていた。それを渡邊さんに伝えれば、彼は全然良いけどと戸惑いつつも承諾してくれる。
「すぐに返します」
そう言って、渡邊さんが棚から出してくれた大きめのクロックスに足を突っ込む。
「あのさ」
立ち上がろうとしたあたしを呼び止めたのはジン君。あたしはひんやりとした床に手を置いて、今一度彼を見上げた。
「テーブルのやつ。あんたが作ったの？」
予想外の質問だった。ジン君の問いかけに、あたしは一瞬間を置いてから軽く頭を縦に振る。眼球を突き刺すほどに鮮やかなオレンジ色の朝焼けが、彼が左手に持っている銀色のライターに反射して眩しい。銀の滑らかなボディには
「マホト、端の部屋空いてるよね」
「え？開いてると思うけど、なんで」
不思議そうに答えた彼を尻目に、ジン君は嬉々とした様子で顔を
「ハイ、決定」
ジン君の大きな声と共に物凄い音を立てて閉まった玄関の扉。びくりと身体を揺らしたあたしの肩を両手で掴んだジン君はニッコリと微笑んだ。
「今日からあんたの家、ここね」
ナンノコッチャと驚いたあたしよりも先に「え？」と言ったのは後ろに居た渡邊さんだ。清々したように笑ったジン君の透き通った瞳は、純粋無垢な子供のようにキラキラといつまでも輝いている。
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匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» とても嬉しいコメントありがとうございます^ ^ なかなか試行錯誤しておりますが、私なりの彼等を楽しんで頂ければと思います。お話いっぱいになり移行しましたので、次も末永く応援頂けると嬉しいです！ (2018年4月26日 21時) (
レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 花恋さん» お返事大変遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。またお話増えましたので、お時間ある時にでもちらりと覗いてみて下さい^ ^ お待ちしてます。 (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - なななさん» お返事大変遅くなり申し訳ないです。応援ありがとうございます！時間が出来また更新し始めたので、これからも気長に見守って頂ければ嬉しく思います^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 夜星さん» お返事大変遅くなってしまいました。最近時間が出来たのでゆるゆると更新しております。暇な時にでも覗きに来ていただければ幸いです^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんがかくジンくんとマホトくんが一番好きです。匿名さんも大好きです。これからも応援してます！ (2018年4月25日 19時) (レス) id: 65ae9a78b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名
| 作成日時：2017年7月10日 7時
