19.鮮やかサンドイッチ ページ19
SIDE.MAHOTO
「……………うわぁ!なに!?」
思わず叫んでしまった。大声を出した後、俺はピタリと動きを止める。視界の真ん中には俺の顔を覗き込む女の子。というか、上の階に住んでいる…いや、住んでいたAちゃんが居た。目をしばしばとさせる俺と打って変わって、彼女は瞬き一つせずにこちらをじっと見下ろしていた。
「おはようございます」
俺に挨拶をした彼女の後ろ、カーテンの隙間から朝日が部屋に滑り込む。朝早くにも関わらず彼女は綺麗に身なりを整えていた。
「……おはよう」
どうしたのと尋ねる前に、彼女は「昨日はご迷惑をお掛けしました」と頭を下げた。さらりと揺れた髪の毛を目で追う。
「いや、全然。気にしないで…」
俺は左右に首を振った。結局あの後、Aちゃんはこの家のリビングに泊まった訳だが、”眠れた?”とかそんな事聞くまでもない。おそらく一睡もしていないであろう、目の下に薄い隈が出来ている。まぁよく知らぬ人間の家でぐっすり眠る人もおかしいかと思いつつも、俺はゆっくり起き上がった。
「どうしたの、こんな朝早くに」
「始発で帰ります」
「ああ…だからこんな早いの」
時計を見上げた俺は納得するように目を細めた。
「始発って、どこ行くの?」
「家に帰ります」
真顔のまま言った彼女はきっと家になど帰りやしないだろう。俺が次の言葉を選んでいる間に「それでは」と付け足してAちゃんは部屋を出て行く。あまりにも淡々としてるその様子に驚いたが、一夜明けてより冷静になったのだろうとも思った。布団を足で押し退けてゆるりと立ち上がった俺は、彼女を追って自室を出る。
「あれ、なんかいい匂いする」
部屋を出てすぐ、リビングから香ってくる匂いに呟いた俺。テーブルに並ぶ沢山のサンドイッチに目をやった。
「Aちゃんが作ったの?」
尋ねれば、彼女は気まずそうに口を開く。
「図々しいかなと思ったんですけど、一応、朝ごはん……なんです」
「…すげぇな、こんな材料あったんだ」
皿には彩りどりのサンドイッチと添えられた野菜達が並び、キッチンにある鍋の中にはスープまで用意されている。確かに冷蔵庫の中は普段から割とパンパンだけど、それ等をこの家で有効活用出来てるメンバーは少なかった。
「良かったら食べてください」
控えめに言ったあと彼女はそそくさと玄関まで歩いて行く。ありがとうと返した俺もその背中を追いかけた。ふと玄関先で動きを止める彼女の視線の先、ゆっくりと開いた玄関の扉の奥に居たのはジンだった。
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匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» とても嬉しいコメントありがとうございます^ ^ なかなか試行錯誤しておりますが、私なりの彼等を楽しんで頂ければと思います。お話いっぱいになり移行しましたので、次も末永く応援頂けると嬉しいです! (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 花恋さん» お返事大変遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。またお話増えましたので、お時間ある時にでもちらりと覗いてみて下さい^ ^ お待ちしてます。 (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - なななさん» お返事大変遅くなり申し訳ないです。応援ありがとうございます!時間が出来また更新し始めたので、これからも気長に見守って頂ければ嬉しく思います^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 夜星さん» お返事大変遅くなってしまいました。最近時間が出来たのでゆるゆると更新しております。暇な時にでも覗きに来ていただければ幸いです^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんがかくジンくんとマホトくんが一番好きです。匿名さんも大好きです。これからも応援してます! (2018年4月25日 19時) (レス) id: 65ae9a78b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2017年7月10日 7時