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ー番外編ー ページ47

side 獪岳



俺は麻呂眉の笑顔が嫌いだ。

町でアイツを初めて見かけた時、アイツは俺と同じ孤児のくせに、真っ当に生きていた。
人助けをして見返りを貰って、それで生きているアイツの笑顔が、嫌いだ。

寺に連れて行かれた時、アイツは笑顔で行冥さんを出迎えていた。
アイツの眩い笑顔は、見ていてただひたすらに、腹が立った。

アイツに名前を聞かれ、俺は更に腹が立った。
自分の名前なんて知らない。
そもそも名前が無くても生きていくのには困らなかった。


「お前なんかに教える意味が無い」


俺がそう返せば、アイツは顔を顰めた。

俺はそのまま行冥さんに風呂に連れて行かれた。
首の勾玉を外すように言わレたので、素直に勾玉を通している紐を解く。


「ん?何か彫っているな」


着替えをカゴに入れてた行冥さんが、勾玉に触れて首を傾げた。

そういえば、勾玉には文字が彫ってあったな……
文字なのは分かるが、俺は文字が読めないので、何て書いてあるのかは知らない。


「何て書いてあるんですか?」

「済まない。私は目が見えなくてな……大きな文字なら読めるんだが……」


苦笑する行冥さん。
目が見えないのか。気付かなかった。

風呂から上がると、今度は居間に連れて行かれた。
紙と筆を用意した行冥さんは、勾玉に書いてある文字を大きく書く様に言った。
俺は言われた通り、勾玉にうっすらと彫られた文字を見様見真似で書く。


「これは“カイガク”と読む。君の名前だろう」


行冥さんは優しく微笑むと、俺の頭を撫でた。

名前がわかっても、アイツには教えなかった。
アイツの名前も教えて貰ってないので、「麻呂眉」と呼んだらアイツは反応を示した。
麻呂眉は敵意剥き出しだった。

寺に住み始めて、何年も経っていた。
麻呂眉の隣は楽だった。
笑顔は嫌いだったけれど、それでも麻呂眉の隣では落ち着いていられた。

ずっと、このままの生活が続くのかと、思っていたのに。

麻呂眉はこの寺から出て行って、よその家の子になると聞いた。

どうでも良くなった。
金を盗んだのは、多分きっと、麻呂眉に何か渡したかったからだと思う。
寺にいる子供達を生贄に差し出したのは、麻呂眉がいなくなる後だから、もう本当にどうでも良い。

すぐに麻呂眉が出て行く日が来てしまった。
麻呂眉の帯紐に通してある勾玉は、柄にも無く町で働いて買ったやつだ。


「じゃあね、獪岳」


麻呂眉は一等眩い笑顔でそう言った。

やっぱり俺は、コイツの笑顔は嫌いだ。

ー人物アレコレー→←ー45ー



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設定タグ:鬼滅の刃 , 転生トリップ , 獪岳   
作品ジャンル:ラブコメ
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作者名:そうや | 作成日時:2020年6月7日 21時

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