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ー41ー ページ42

私はボロボロになる兄の体にしがみ付いた。

兄は私を優しく抱きしめると、私の頭を優しく撫でる。
足元に転がる兄の首も、みるみるうちに崩れて行く。


「兄さん、待って。逝かないで」


お願い。
逝かないで。
ねぇ、兄さん。

兄の胸元に耳を押し付けるが、兄の心臓の音は聞こえない。

床にある兄の顔は、悲しそうに泣いていた。


「泣いて。A、泣きなさい。私みたいになってはいけない」


普通、こう言う時は「笑いなさい」と言うんじゃないの?
私が見てきた作品は、そうだった。
泣き顔なんて見たくない、と。笑っている顔が見たいと言うのだ。

喉の奥が痛い。
鼻の奥がツンとする。
目の奥が熱い。
それなのに、涙は一滴も出なかった。


「……ごめんなさい……」

「ダメだよ、泣かないと」


兄の両手が崩れて、私が支えていないと倒れてしまいそうだった。


「……父さん、母さん___」


兄の顔も崩れてしまった。
兄の声も途中で途切れてしまった。
体が完全に消え去り、私の腕には、兄の着物しか残らなかった。


「……」


呆然と、手元の着物を見つめる。
血濡れた着物は、冷たかった。


「……どこも怪我はしていないか?」


女隊員が声をかけてきた。
私は顔を上げる。


「あ、はい、大丈夫です」


いつもの癖で即答し、笑顔を貼り付ける。
女隊員は私を見て、悲痛そうに表情を歪めた。

すぐに隠の人たちが家に駆けつけた。
私は隠から説明を聞いたが、右から左に聞き流していたので、話の内容は全く覚えてない。

朝ご飯の時間になる頃には、家の周りに野次馬が集まり、報せを聞いて駆けつけた祖母が、血相を変えて家に上がり込んできた。
そして、家の有り様と死体を見て、喚き散らした。
祖母は、隠の人の話に相槌を打つ私の髪を掴み、引き摺り、家の敷地外へ蹴飛ばしたのだ。

私は訳が解らず、ゴロゴロと地面を二回程転がった。

野次馬が私を綺麗に避けてくれたおかげで、誰かにぶつかってしまうという事は無かった。


「私は反対した!お前なんて必要ないと!!養子なんて要らない!!疫病神!お前が!お前さえいなければ!!出ていけ!!」


人の目なんか気にせず、祖母は私を蹴って、蹴って、蹴りまくる。


「もう二度と、うちの門をくぐるんじゃないよ……」


ゼェゼェと肩で息をする祖母は、泣きながら家へ入って行った。

私は寝転びながら空を見上げた。
今にも雨が降りそうな、どんよりとした天気である。

……これからどうしよう……?

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設定タグ:鬼滅の刃 , 転生トリップ , 獪岳   
作品ジャンル:ラブコメ
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作者名:そうや | 作成日時:2020年6月7日 21時

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