ー4ー ページ5
お坊さんとの二人暮らしに慣れてきた頃、お坊さんが子供を連れて帰ってきた。
私と同じくらいの歳の男の子だ。
黒髮で、勾玉を通した紐を首に巻いている。
おかえりなさーい!と、刀剣男士のログインボイスの様にお坊さんを出迎えたが、子供が視界に入って、私は思わず真顔になった。
誰だって、知らん人がいたらビビる。
しかも、割と上機嫌に出迎えてしまったのだ。
気まずい。私が。
黒髮の子は、お坊さんを盾にする様に隠れている。
ひょこっと顔を出したと思ったら、私を睨んできやがった。
粟田口の短刀達みたいな可愛らしいショタとは程遠い。
視線を逸らしたら負けな気がするので、私はこの子から目を離さない。
ガン見してたら、その子はチッと舌打ちした。
クソガキだ。
顔はいい方なのに、睨んでくるし舌打ちするしで、印象はマイナスである。
とりあえず、このままでは埒が明かないと思い、私は名前を尋ねた。
名前すら教えてくれなかった。
名前を教えてくれなかったので、渾名つけて呼んでやる!!
「今日から、この子もここで暮らす事になった」
お坊さんがその子の頭を撫でながらそう言った。
デスヨネー。
じゃなきゃ、いきなり子供連れてこないよね〜。
隠し子なんていないだろうし。
「アッ、ハイ」
私は一応返事をした。
黒髮の子はベーッと舌を出してバカにしてきた。
バカにされる意味が解らん。関わらんとこ。
誰にでも苦手な人は居るのだ。
そんな人が現れた場合、無駄に突っかかったり、無理して好きになろうとしなくていい。
ストレスが溜まるから。必要最低限、関わらない。
それにしても、あいつムカつくなぁ。
初対面で敵意剥き出しって、どういう事?
一人悶々としながら、ご飯を作る。
お坊さんは、黒髮の子をお風呂に連れていった。
私の時みたいに、体の隅々まで洗うんだろうなぁ。
それにしても、これから三人暮らしかぁ……
一食分の量が減るぞ。
金銭的余裕はないのだから。
仕方ない。
私はお世話になっている身だし、文句は言えない。
私ができる事なんて、家事と町のちょっとしたお手伝いくらいだ。
町のお手伝いでも、お金をくれるなんてよほどの事が無い限りは期待できない。
貰える物はせいぜいおやつくらいだ。
やっぱり、ちゃんとお店で働いた方が稼げるのかな?
でも、私はまだ子供だからなぁ……
「おい麻呂眉」
「ウルセェ勾玉野郎」
私が関わろうとしなくても、向こうはそういうつもりは無いらしい。
既に胃が痛い。
11人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:そうや | 作成日時:2020年6月7日 21時