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エレンが調査兵団に入りたいとリヴァイやエルヴィンに言った時の様な、ギラッギラの笑顔である。
知的で優男な兄が、こんな表情をするとは思わなかった。
「しかし、兄さん……家は、継がないんですか？」
私がそう訊ねると、兄はキョトンとした。
「継げないよ。まだ、全ての事を父から教わってないからね」
兄は私の手を引いて、私の部屋に入る。
明るい部屋で見た兄は、血濡れていて、顔色も悪かった。
「兄さん、お医者さんを呼びましょう。顔色が……」
「ああ、大丈夫。Aは本当に優しいね」
いやホント、顔色が悪いよ。
青白いよ。
「私は荷物を纏めて来るから。Aも自分の荷物を纏めておいて」
本当に家を出るつもりなのだろうか？
そして、私も当たり前の様に兄について行く事になっている。
兄は私の返事を聞く前に、部屋から出て行った。
ポツンと取り残された私は、慌てて部屋から顔を出す。
「兄さん！私、お手洗いに行ってきます！！」
デカい声で言うなど、レディーとしてあるまじき行動だが、仕方ない。
私は厠に行きたいのだ。
私は部屋から出て、今度こそ厠に行った。
部屋に戻ると、既に自分の荷物を纏めたであろう兄が、真新しい服を着て待っていた。
「あの、兄さん」
「何だい？」
「何故、家を継げないんですか？」
ベッドに腰掛けている兄を横目に、私はクローゼットを開けた。
兄は顎に手を当て、何か考えている。
「うーん……Aには、刺激が強かなぁ」
年齢規制がかかる話らしい。
貿易会社なのに？？
ヤバイ仕事なんてしてないでしょ？
何故？？
「……家族には、相談しなくていいんですか？」
「もう、相談できる状態じゃないんだよ」
「えっ」
もしかして、さっき騒がしかったのって、母とお腹の子に何かがあって＿＿＿
「A、早くしないと朝になってしまうよ」
「あ、はい。すみません」
笑顔の兄さんに促され、私はさっさと荷物を纏める。
荷物を纏め終えた私を見て、兄は部屋の窓を開けた。
夜の冷たい風が、部屋に流れ込む。
「さ、A」
兄が窓枠に足をかけ、私に手を差し出す。
窓から出て行くらしい。
「玄関から出ないんですか？」
「うん……こういうの、一回やってみたかったんだ」
照れ臭そうに笑う兄。
顔がいい。
そして割と子供っぽいらしい。
私は笑いそうになるのを堪えて、兄の手に自分の手を重ねる。
兄は私の手を引っ張ると、外へ出た。
外は、とても静かだった。
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作者名：そうや | 作成日時：2020年6月7日 21時
